冬のフィンランドは太陽が昇らない?極夜の鬱々とした気持ちを乗り切る方法

極夜の鬱々とした気持ちを乗り切る方法_表紙 文化・生活

 こんにちは。ズッキーです。

 夏は、一晩中明るい日(白夜)もあるフィンランドですが、冬は逆に昼間も真っ暗。

 私が留学していたフィンランド中部の都市オウル(Oulu)では、12〜1月頃の日照時間は、日の出は午前10時過ぎ、日の入りは午後2時頃。日照時間はわずか4時間程度でした。

 さらに北のラップランド地方へ行くと、太陽が地平線の上に顔を出さない「極夜」という現象が起きます。

 これを、フィンランド語では”kaamosカーモス“と呼びます。正式には極夜という意味ですが、フィンランド全域が極夜になるわけではないので、11〜1月の長くて暗い夜を指して “kaamos” と言うことが多いです。

 太陽を拝めない日々が続くと、人間は驚くほど鬱々とした気持ち(冬季うつ)になりやすくなります。結構辛いです。そこで、今回は、私が現地で学んだ “kaamos” を乗り切るための方法を伝授します。

 

 

冬のフィンランドの日の出・日の入り時刻

イナリ(Inari) 12月28日極夜14〜15時くらい。昼間は明るくなるが太陽はでない

 まずは、フィンランドの日の出、日の入り時刻を確認しましょう。

日付都市日照時間日昇日没
11/15イナリ4h46m9:3414:20
ロヴァニエミ5h52m9:0614:58
ヘルシンキ7h37m8:1815:55
12/15イナリ0h極夜
ロヴァニエミ0h極夜
ヘルシンキ5h53m9:2015:13
1/15イナリ0h極夜
ロヴァニエミ4h09m10:2314:31
ヘルシンキ6h34m9:1315:48
sunrise.maplogs.comより

 比較のために、東京の冬至の日の出・日の入り時刻も載せます。

日付都市日照時間日昇時間日没時間
12/22東京9h45m6:4716:32
国立天文台HPより

 東京で最も日が短い冬至の頃と比べても、フィンランドの日の短さは、悲しくなるほどに短いです。

 特に、北緯66.6度以北の地域(▶︎ラップランドとよばれる地域)では、冬至(12月22日頃)前後に、太陽が昇らない極夜という現象が起きます。つまり、24時間全く太陽が出ません。

 北緯60.2度のヘルシンキでは、極夜ではありませんが、昼間の5時間程度を除くと、ほぼ真っ暗です。

(▶︎【図解】白夜と極夜の仕組みと期間を解説|沈まない太陽と昇らない太陽

 そのため、日本人がフィンランドに旅行に行くと、時間感覚が狂ったり、暗くて、気分も下がったり、眠りが浅くなったりすることがあります。

 

太陽の光がないと鬱になる? 眠い?

 フィンランドの国民的スター、ムーミンたちですら、冬は冬眠しています(ムーミン・ワールドは、冬眠を理由に冬場閉園)。なら、人間だって、冬眠してもいいくらいです。太陽の光もないのに、活動する必要はないんです。

 と、冗談はさておき。

 日光を浴びることは、人間にとって、かなり重要です。日の当たらない冬の時期、フィンランド人の4〜5人に1人が冬期鬱病(SAD:Seasonal Affective Disorder)になっていると言われています。

 実際に、私がフィンランドの冬で感じたのは、次の症状。

  • 常に眠い
  • 気分がさがる
  • 体が怠い
  • 爪が割れやすくなった気がする?
  • すごくお腹が減る

 私は、留学当時、なんとなくそう感じていただけで、特に理由とかを知っていたわけではないのですが、調べてみると、科学的にも正しそうだとわかりました。

 見ていきましょう。

 

日光を浴びていないと不調になる理由①:ビタミンD不足

 日光を浴びないことで不足する物質の代表が、ビタミンDです。

 ビタミンDは、体内でホルモンとして作用する物質の一つで、皮膚が日光を浴びることで、作られます。『ハーバード医学教授が教える健康の正解』によると、ビタミンDは、骨折、前立腺がん、高血圧、風邪の予防に効果があるとされています。

 また、ビタミンD不足は、睡眠障害、抑うつ状態のリスクを高めるとされています。ビタミンDの摂取によって、抑うつの改善効果も示唆されていることから、日光を浴びないことで、暗い気持ちになるのも、あながち間違いではありません。

 

日光を浴びていないと不調になる理由②:セロトニン不足

 セロトニンは、「幸せホルモン」とよばれることもある物質で、気持ちを前向きに、リラックスさせてくれる効果があります。このセロトニンも、太陽の光を浴びることで脳内で分泌されます。

 セロトニンはメラトニン(身体に夜を認識される物質)の原料となるため、セロトニンが不足すると睡眠にも悪影響があります。

(メラトニンについてはこちら。▶︎フィンランドの白夜、明るすぎて眠れない|旅行者がすべき睡眠対策まとめ

 

日光不足による不調のメカニズム

気分が下がる|ビタミンD不足 × セロトニン不足

 日光を浴びないと、精神安定の効果があるセロトニンの分泌が減り、気分が下がりやすくなります。また、ビタミンDは、セロトニンを作る酵素とセロトニンを分解する酵素を調整する役割をもつため、血中のビタミンD濃度が低いと、抑うつ状態になるリスクが高くなる可能性が指摘されています。

 つまり、日光を浴びないことで、体内のホルモンバランスが崩れることが、気分が下がる要因になると考えられます。

 

眠りが浅い? 眠りすぎる?|ビタミンD不足 × セロトニン不足

 ビタミンDの受容体は、視床下部、前頭前野、中脳中心灰白質、黒質、縫線核など、睡眠調節において重要な役割を果たす脳の領域に広く分布しています。そのため、ビタミンDが欠乏すると、睡眠の質の低下、短時間睡眠、眠気などの症状が出ることがわかっています。

 一方のセロトニンは、人間の体内時計を調整するはたらきを持っています。そのため、セロトニンが欠乏すると、身体の1日のリズムが崩れてしまいます。

 太陽の光を浴びないと、これらが複合的に起き、ビタミンDとセロトニンが不足するため、うまく眠れなかったり、眠りの浅かったりということが起きます。

 また、冬期うつ特有の症状として「過眠(寝すぎ)」があります。これは、日中も脳が『夜だ』と勘違いし、睡眠ホルモンのスイッチが切れない状態です。単に長く寝るだけでなく、いくら寝ても脳に霧がかかったように眠いのが特徴です。

 ちなみに、眠りが浅いことも、眠りすぎることも、糖尿病、高血圧、ガンなどの健康リスクの原因となります。対処するに越したことはありません。

 

爪が割れやすい|ビタミンD不足

 ビタミンDにはカルシウムの吸収を助けるはたらきがあるため、日照時間が短くなると、つめが弱くなることがあります。

 

すごくお腹が減る|低気温 × セロトニン不足

 フィンランドにいたときはやけにお腹が空いて、私は寒いせいだと思っていたのですが、それだけでもないようです。

 冬期うつ(SAD)の症状に「お腹が空く」「体がだるい」「眠りすぎる」というものがあります。

 視床下部のセロトニンは、満腹感や摂食調整の機能を担っているため、冬にセロトニンが減少すると、とくにSAD患者の人は、炭水化物を欲するようになり、体重が増加する傾向があります。

 炭水化物をとることで、アミノ酸のトリプトファンというセロトニンの原料が脳内に取り込まれやすくなり、セロトニン合成が促進されるためだと考えられています。

 もちろん、低気温で、体温を保つためにエネルギーを多く使うことも、原因の一つではあります。

 だから、少し食べすぎても、自分を許してあげました。私、優しい!

 

日光不足によるホルモン不調と身体の症状
  • ビタミンD・セロトニン不足…気分が下がる、睡眠障害など
  • ビタミンD不足…爪が割れやすい
  • セロトニン不足…空腹感、身体のだるさなど

 

 

科学的にフィンランドの冬に抗う方法

高照度光療法(ライトセラピー)

 Finnish Student Health Service(FSHS)では、冬期うつ症状の改善手段の一つとして、高照度光療法(ライトセラピー)をすすめています。最低2500ルクス以上の明るいライトを使って、毎朝30〜60分、光を浴びることを推奨。最初は、10分ほどから始めるのが良いそうです。

 1度に浴びるより、1日2回、朝と晩に浴びると、効果が高いという報告があります。自分に合う方法を試してみてください。

 フィンランドへ移住・留学する際は、日本でライトを購入して持っていくことも可能です。10,000ルクス前後のライトで、5,000〜10,000円ほどで買えると思います。タブレットのようにコンパクトなものもあります。

 日本でも、「日光足りないな」とか「冬は気分が下がるな」と思ったら、ライトセラピーとして使っている方もいるみたいです。知りませんでした。

 ただし、市販のライトセラピー商品のほとんどは、UVフリーであるため、ビタミンDの補給にはなりません。注意してください。

 

ビタミンDサプリ

 ビタミンDに関しては、私はずっと飲んでいます。

 冬にフィンランドへ行く旅行者も、摂取してもいいと思います。

 私が住む北海道も、冬の日長が短いので、ビタミンD不足になっていると思うんですよね。北海道へ来てから、11月ごろが暗くて、本当に嫌だったんですけど、フィンランドへ行って、ビタミンDの存在を知って、飲み始めてからはマシになった気がします。

 気分が下がるなと思ったら、試してみてもいいと思います。本当に。

※日本のサプリは一粒1000IU(25〜30μg)前後のものが多いです。現地での摂取量は薬局(Apteekki)などで相談してください。

※持病や服薬中の方は医師・薬剤師へ相談を。

 

外に出てわずかな光を浴びる

 太陽の光が少ないなら、その少ない太陽を必死に浴びるのも大事です。

 私が住んでいたオウルという町は、冬の間は、10〜14時くらいに日が出るイメージです。

 その時間に陽を浴びなければ、その日は太陽を拝めません。

 日本では、夕方に買い物に行くのですが、フィンランド留学中は、ちょっと遠いPRISMAというスーパーに昼間に買い物に行くようにしていました。推奨するわけではないですが、正直、授業少し減らしても、太陽浴びた方が健康のためにはいいくらいです。

 心身の健康がいちばん大事です。

 

 

人に相談する:鬱を表すフィンランド語・英語

  • 🇫🇮語:“Kaamosmasennus”「極夜のうつ」
  • 🇬🇧語:“SAD”(季節性感情障害)

 言葉があるということは、それだけ多くの人が悩んでいる共通の現象であるということですね。

 詳しい表現については、▶︎フィンランド語で冬期うつを伝えるには? 現地で使える会話フレーズ集で紹介しています。

 

生活のデザインでフィンランドの冬を乗り切る

北欧デザインを取り入れる

 北欧デザインは、明るい色合いで、シンプルなデザインが多いです。

 そんな素敵な北欧デザインは、暗い極夜の気持ちを明るくするのに、ぴったりです1。自分が選んだベストな環境に囲まれながら、落ち着いた時間を過ごせば、暗い時期も乗り越えられる……はず。

 まあ、それだけで乗り越えられたら苦労しませんわ。

 でも、アドベント・スターを飾ったりするのは、とてもいいと思います(▶︎クリスマスに窓に飾られている星飾りってなに?北欧のアドヴェントスターの歴史と起源)。

 

ロウソクを取り入れる

 私は、昔からロウソクが好きです。

 火の揺らぎを見ていると不思議と心が落ち着きます。

 これは、フィンランドで古くから生活に取り込まれている習慣でもあります。フィンランドは、国民一人当たりのロウソクの消費量、世界一位をとっています。

 ただ、私の場合、子供の時に「夜、火遊びするとおねしょするよ」と言われて育ったので、毎回少しチビりながら、ロウソクに火を灯しています。

 

サウナに入る

 留学中、アパートで共用サウナが使える曜日が決まっていました。

 私は、毎週入って習慣化することで、生活リズムを整えていました。習慣化は本当に大事です。

「授業をサボっても、サウナはサボらない」

 それが留学中の私の誇りでした。皆さんも真似してみてください。

 

  

私の冬の乗り切り方

外に出る理由を作る

 サウナのところでも話しましたが、冬はとにかく習慣を持って続けることが大切です。寒いので、外に出たくない中、外に出る理由を持つことが、冬の不調を防ぐ一番の手です。

 

冬のアクティビティに精を出す

 フィンランドのじいさま、ばあさまは、よく近くの森や公園でクロスカントリースキーに興じています。

 私の場合は、アイスフィッシング(雪穴釣り)に行ったり、ダウンヒルスキーに行ったり、アイスホッケーの観戦に行ったりしました。冬は、あちこちの公園にスケートリンクができるので、アイススケートもやりましたね。

 それなりに、最初のやる気が必要です。

 

オーロラを追っかける

 冬はやることがないので、オーロラ予報を毎日みて、オーロラが出そうな日は外に出て、震えながらカメラを構えました。人とも会わないで済むので、落ち込んでいるときでもできます。

▶︎フィンランドのオーロラ完全ガイド|観測時期・スポット・予報サイト18記事まとめ

 

室内スポーツを楽しむ

 夏の間からスポーツをやる習慣を身につけておけば、そのまま冬に突入できます。

 特に、体育館でできる室内スポーツがおすすめです。私は、友達とバドミントンをしていました。水泳とかもいいですね。フットサルをやっている人もいました。

 

松岡修造の動画を見る

 松岡修造は動画の中で私にこう言ってくれました。

「今日から君は太陽だ!!」

 そう。太陽なのです。私自身が太陽なのです。つまり、松岡修造の動画は、見ている人に、擬似的な太陽を感じさせ、不足しているセロトニンを脳に錯覚させる効果があるのではないかと思います。

 今はまだ、学術的には証明されていませんが、いつか、きっと……!!

 

狩野英孝の動画を見る

 狩野英孝のクセつよ動画を見ていると、あらゆる悩みが馬鹿馬鹿しくなり、鬱々した気持ちを吹き飛ばすことができます。

 そして、笑うことは、免疫力を高めることになります。一石二鳥です。

 

まとめ|5秒でわかる! フィンランドの冬の不調を乗り切る方法

 冬に病む、冬に太る、冬に眠いのは、あなたの意志が弱いせいではなく、太陽不足でセロトニンやビタミンDが切れているだけです。

 なので、やるべきことは、たったの4つ!

  1. 光を浴びる (朝に明るいライトを浴びる。1日2回だとなお良し)
  2. ビタミンDを飲む (サプリで日光不足を補う)
  3. 外に出る理由を作る (サウナでも、買い物でもいいから動く)
  4. 松岡修造の動画を見る(松岡修造で日光不足を補う)

 フィンランドで会ったアジア人留学生が言っていました。

 「ずっと住んでいる人なら大丈夫なのかと思ったら、現地の人すら、気分が落ち込んでいるんだけど! いわんや我々、外国人をや」

結論

人間も冬眠モードに入るのは当たり前。自分を甘やかして、科学の力で乗り切ろう!

 それでは〜!!

 

 

参考文献

 

脚注

  1. 北欧デザインとkaamos
    「明るくシンプルな北欧デザインは、暗い極夜を明るく過ごすための、生活の知恵」などと紹介されることがあります。ただ、20世紀に北欧デザインの基礎が作られたのは、むしろ国家戦略や機能的・素材的戦略であって、極夜を乗り切る、明るい色調を手に入れたのは、結果ではないかと私は思います。 ↩︎

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