【光と闇製造マシーン】フィンランドのリサイクル制度がペットボトルの路上放置の原因に!?

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 こんにちは。ズッキーです。

 突然ですが、Reverseリバース Vendingヴェンディング Machineマシン、略して、RVMをご存知でしょうか。

 リバァス・ヴェンディング・マシィィィン。

 ………あ、カッコいいから言ってみたかっただけです。

 

 これは、ペットボトルや缶などのリサイクル製品回収機のことです。

 私は、この機械を「光と闇製造マシーン」と呼んでいます。

 RVMは、デポジット制度(PANTTI)に基づいて、消費者がリサイクル品と引き換えに、現金を受け取れる仕組みのことです。

 つまり、リサイクルに協力すると、現金が手に入るのです。

 この一見良い制度が、なぜフィンランドの悪い一面を生むのでしょうか?

 

 

フィンランドの「デポジット制度(PANTTI)」とは?

RVM(リバース・ベンディング・マシーン)の基本

 まずは、リバース・ヴェンディング・マシーン(RVM)を説明しますね。

 Vendingヴェンディング Machineマシーンは、英語で自動販売機のことです。つまり、お金を払うと、自動でボトルや缶飲料を吐き出してくれる機械です。

 これをリバース(反対に)するということなので、ボトルや缶などを入れると、お金を吐き出す機械だということになります。

 わかりやすくいうと、リサイクル品回収機です。

 

 日本でも、ペットボトルなどを入れると、ポイントをくれる機械が出てきました。

 日本との違いは、この機械がお金をくれることです。回収したビン、缶やペットボトルは大きさと数に応じて、お金をもらえます。

 

 このマシーンRVMは、スーパーやAlko(酒類専売国営企業)の店の前に設置されています。

フィンランドの光と闇製造マシーン

 

空の容器からお金をもらう方法

 フィンランドで購入できるビンや缶、ペットボトルには、リサイクルマークの中央に0.10〜0.40€の金額が書かれています。お金がもらえるのは、このリサイクルマークの印字された缶やボトルだけです。

Karhuのビール缶のバーコードの下あたりにリサイクルマーク(たぶん€0.15)が入っている

 中身を飲み終えた空の容器を、スーパーやAlkoに設置されたマシーン1RVMに持っていきます。

 この際に、日本のゴミ分別のクセが出て、ラベルを剥がすと、お金をもらえなくなってしまうので、注意してください

 

 マシーンには、穴が空いているので、そこに一本ずつ缶とペットボトルを入れていきます。容器が潰れていたりして、形が変形しているやラベルが剥がれている場合には、認識できずに戻ってきます(挑戦済み)。必ず、一本一本機械の中に吸い込まれていくのを確認してください。

(中はきちんと洗ってから、マシーンに入れるのがマナー)

 

 全部のリサイクル容器を入れ終わったら、緑のボタンを押してください。

 合計金額が印字されたレシートが発行されるので、それをスーパーやAlkoのレジに持っていくと、現金に交換してもらえます。

 レシートは単体で持っていって、現金を直接もらうこともできますし、商品を購入してその合計から差し引いてもらうこともできます。

 

 初めての機械操作で不安な時は、まず、他の人の動きをよく見て、それを真似すると良いと思います。私はそれで、うまくできました。

 

 では、なぜリサイクルするだけでお金をもらえるのでしょうか?

 

 

日本との決定的な違い:デポジット(PANTTI)の仕組み

 それは、飲み物購入時に容器代(デポジット)が商品の価格に上乗せされているからです。

 つまり、あらかじめ多めに払っていたデポジット分のお金が、後から返金されるという仕組み2です。

 てっきり、私はリサイクルに協力することで、無料タダで業者からお金がもらえるのかと思っていたのですが、そういうわけではありませんでした。

 

RVMがもたらす光の側面

フィンランドの高いリサイクル率

 This is Finlandによると、フィンランドでは、2020年に購入された缶やペットボトルのうち、93%(20億本)がリサイクルされました。

Return rates in 2020 totalled 94 percent for aluminium cans (out of 1.4 billion sold), 92 percent for plastic bottles (out of 530 million) and 87 percent for glass bottles (out of 133 million). 

([訳] 2020年のリサイクル率は、アルミニウム缶94%(14億本のうち)、ペットボトル92%(5億3,000万本のうち)、ビン87%(1億3,300万本のうち)でした)

This is Finlandより引用

 この高い割合を見ると、お金が戻るという仕組みが、国民の高いリサイクル意識を支えているように思えます。

 

日本のリサイクル率

 ちなみに、日本のリサイクル率は、アルミ缶99.8%(2024年度)、スチール缶94.4%(2024年度)、ペットボトル85.0%(2023年度)でした。

 

 あれ、日本意識高すぎないっ!? なんかおかしくない!? 

 お金もらえないんだよ!?

 やっぱり日本人のルールの守り具合は異常ですよ!!

([意訳]日本の場合、市町村による分別回収メーカー主導のリサイクルルートの整備と、消費者のルール遵守の精神の賜物です)

 

RVMの仕組みを日本にも導入して欲しい

 さて、ここまでフィンランドのRVMを紹介してきましたが、RVMは、リサイクルするという意識づけに、とても良い仕組みだと思いませんか??

 私は、いつも「ゴミの仕分け、面倒だな〜」と思っているのですが、ペットボトルや空き缶の回収に協力するだけで、お金がもらえる状況なら、「頑張って仕分けをしたい」という意欲が湧いてきます(先に払っているだけなんですけど笑)。

 

 コロナ後に広まった路上飲みで、路上に缶やペットボトルが放置されている問題も、これで解決するのではないかと、前に考えたことがあります。

 缶とかペットボトルをリサイクルしたら、お金になる仕組みを作れば、路上に空の容器を残すトラブルが減るんじゃないかと思ったのです。

 だって、それ集めたら、またお酒になりますからね。

 

 そんなわけで、このマシーンの仕組みを初めて知ったとき、「ペットボトルとかカンカンを持っていくだけで、お金になるなんて、フィンランドはなんて素晴らしい国なんだ」と思いました。貧乏性の私としては、自分のゴミがお金になるなら、ルンルンでスーパーに行くし、嬉しくてたまらないです。

 別に得しているわけではないですが、先に払っているという意識もないので、とても得した気持ちになります。

 だから、「ポイ捨ても少ないだろう」と。

 

 ところがどっこい。

 そうは問屋がおろしませんでした。

 

リサイクル容器が映す「闇」の側面

路上放置の現実と友人との会話

 これは、フィンランドで私が嫌いなことの一つなのですが、このお金がもらえることが理由で、フィンランドの人々が飲み終わった缶やペットボトルを道端や公園の隅などに放置するのです(みんなではありませんが、多いです)。

私 「え、なんでそこにおいてくの?」

友人「回収する人がいるから、大丈夫」

 確かに、Vappuなどのお祭りやミュージックフェスティバルなど、人がたくさん集まるところでは、カンカンやペットボトルが、当然のように道に捨てられ、放置されているのをすごくよく見ます。

 うわあ、と思って見ていたら、ビニール袋を持った、お金を持っているとはちょっと言えなさそうな人たちが現れます。そして、フィンランドの人たちが、そこらへんに捨て散らかしたリサイクル容器をほいほいと拾って回収していくのです。

 

 時には、

「その空いたやつもらっていい?」

と、飲み終わったものをめざとく見つけて、飲んでいた人から直接回収していく人もいます。

 回収された側は、それを当然と思っている様子で、特に気にしてもいません。

 そういうことを見ると、知らない人ならまだいいのですが、普段人あたりの良いフィンランド人の友人の場合は特にもやもやして、それに、うーん、となっていました。

「それ、私は好きじゃない」

と伝えても、

「言っていることはわかるけど、こういうモノだし」

と言われることもありました。

 

 喜んで回収する人と、当然のように道端に捨て置く人。

 これが成り立つのは、それがお金になるから。

 これでは、リサイクル意識が高いのか、低いのかわかったものではありません。

 

「あれ? これを日本に導入したとしたら、どうなるんだ!?」

 仕組みとして成り立つのはわかるのですが、私は、これが嫌で嫌で仕方なくて、見るたびに、ちょっとだけフィンランドが嫌いになりました。

 

 私の心は、最後の清流、四万十川くらい綺麗なので、その綺麗で澄み切った心(?)に、ぽつぽつと、シミを落とされた気がしたのです。

 

回収されないリサイクル容器の存在

 私自身、フィンランドにいるとき、見たことがあるのですが、そのように放置されたビン、缶、ペットボトルの全てが回収されるわけではありません。

 外に放置された容器は、風で倒されたり、運ばれて車に轢かれると、変形してお金になりません。

 路上で回収する人々は、お金が目的ですから、当然、お金にならない容器には見向きもしません。そうして、路上に缶やペットボトルが放置されるのです。

 少し古いですが、2014年のyleの記事によると、毎年推定6,000万本(900万€=12億6000万円分)の缶が回収されていないそうです。これの全てが、放置された缶だとは思いませんが、見ている限りでは、放置が原因となって回収されていない缶やボトルがあると感じます。

 

リサイクルと貧困

 もう一つ気になることがあります。

 それは、「ビンや缶を路上から回収している人はどういう人なのか?」ということです。

 現在、どういう人々が容器を回収しているかはわかりません。しかし、路上に放置された容器を回収する人々は、現金収入を得るために行っていることは確かです。

 

 過去の事例では、ブルガリアからの移民とその子供が、ヘルシンキで缶やボトルを集めていること(yle.fi)や、自分の生活のために、年配のフィンランド人が缶やボトルを集めていること(yle.fi)もありました。

 世間の目さえ気にしなければ、ジョギング途中で空き缶やボトルを集めるだけで、年間2,000〜3,000€(30〜40万円)も稼げるという話も紹介されています。これは、物価の高いフィンランドといえど、かなりの収入です。

 

 貧しい人を助けているといえば、そうかもしれないですが、だからといって、ビンや缶を“恵む”ような行為は、歪な感じがして、釈然としません。

 モヤモヤします。

 

 

まとめ

 つまり、このリサイクルマシーンは、私に恵みをもたらす光のマシーンであり、フィンランドの悪い面を映す闇のマシーンでもあるのです

 だから、私はこのマシーンを「光と闇製造マシーン」と呼んでいます。

 

 正直、「フィンランドの闇」というには大した問題ではないかもしれないですが、暗い、嫌な一面であることは確かだと思っています。

 この仕組みを日本に導入するとしたら、どうなるのでしょうか?

 フィンランドに行く機会があれば、ぜひ自分の目で見て、考えてみてください。

 

 

 

脚注

  1. マシーン(RVM)の台数
    RVMは、フィンランドに約5000台あります。 ↩︎
  2. フィンランドのリサイクルとデポジットの仕組み
    この仕組みはPalpaという企業によって運営されています。 ↩︎

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