※前にちょっとだけ書いていたブログ記事を修正して、移転しました。
こんにちは。ズッキーです。
フィンランド語学習者なら、「ウラル語族ってなーに?」という疑問を一度は持ったことがあるのではないでしょうか? 今回はこの疑問を深掘りします。
はじめに:フィンランド語学習者が一度は出会う「ウラル語族」

フィンランド語を学び始めると、よく耳にする言葉があります。それは「フィンランド語はウラル語族に属するため、他のヨーロッパ言語とは系統が異なります」という説明です。この「ウラル語族」という言葉、馴染みがなく、つい聞き流してしまったり、知ったかぶりをしてしまったりした経験がある方もいらっしゃるかもしれません。
私自身、これまでフィンランド語の学習書を読むたびにこの「ウラル語族」という言葉に出会いましたが、その意味を深く掘り下げずにいました。しかし、ふと立ち止まって考えてみると、「ウラルってどこだろう?」「ウラル語族とは具体的に何を指すのだろう?」といった疑問が次々と湧いてきました。
もしかしたら、同じように感じている学習者の方も少なくないのではないでしょうか。そこで今回は、フィンランド語を学ぶ上で避けては通れない、けれど意外と知られていない「ウラル語族」について、その概要とフィンランド語との関係を、一緒に紐解いていきたいと思います。
「語族」とは何か? 言語の家族分類を理解する
まずは「語族」という言葉の基本的な意味から確認していきましょう。
「語族」とは、簡単に言えば、共通の祖先を持つ言語のグループを指します。人間における「家族」や「家系図」に似ていると考えると分かりやすいかもしれません。
wikipedia先生は以下のように説明しています。
語族(ごぞく、英: Language family)とは、比較言語学において、ある言語(祖語)とそこから派生した全ての言語を含む単系統群のうち、他の単系統群に包含されることが認められていないものを指す[1]。
(語族 – Wikipediaより)
何言っているかわからん。σ( -ˇ.ˇ-。)
一方、デジタル大辞泉では、以下のように説明されています。
世界の諸言語のうち、系統を同じくすると考えられるものを一括していう称。
デジタル大辞泉 小学館
簡潔で、圧倒的にわかりやすいですね!
つまり、互いに似た特徴を持つ言語が、長い歴史の中で枝分かれしながら発展してきた結果、共通のルーツを持つグループとして分類されるのです。例えば、イタリア語とスペイン語がよく似ているのは、両者が同じ「インド・ヨーロッパ語族」に属しているためです。フィンランド語が英語や日本語と大きく異なる文法構造を持つのは、異なる語族に属しているから、と考えることができます。
世界にはいくつの「語族」があるのか?
「語族」という分類方法があることは分かりましたが、世界には一体いくつの語族が存在するのでしょうか。
言語に関する詳細な情報を集めているオンラインデータベース「Ethnologue(エスノローグ)」によると、現在、世界には156の語族と、そこに含まれる7,164の言語があるとされています。Ethnologueのウェブサイトは非常に興味深く、世界の言語の多様性を知る上で参考になりますので、もしよろしければ一度ご覧になってみてください。
このサイトによると、日本語は「日琉語族(Japonic languages)」に属しており、その下に12の言語が分類されています。そのほとんどは、日本の沖縄地域で話されている言語です。
ちなみに、私たちがよく耳にする「インド・ヨーロッパ語族」は、454もの言語で構成されており、非常に大きな語族であることがわかります。英語やドイツ語、フランス語、ロシア語、ヒンディー語などがこの語族に属しています。
「ウラル」とはどこを指すのか?
次に、今回のテーマである「ウラル語族」の「ウラル」が何を指すのかを見ていきましょう。「ウラル」とは、ロシア西部からカザフスタン北部にかけて南北に広がる山脈「ウラル山脈」や、そこを源流とする「ウラル川」に由来する地名です。

「ウラル語族」とはどんな言語のグループか?
それでは、「ウラル語族」とは具体的にどのような言語グループなのでしょうか。
ウラル語族は、主にロシアのウラル山脈周辺地域を起源とし、そこからフィンランドやハンガリーなど、広範囲に広がる言語群を指します。現在ではウラル山脈周辺だけでなく、ヨーロッパの広い地域やシベリアの一部でも話されています。
Ethnologueによると、42の言語がこのウラル語族(Uralic)に属し、以下の9つの言語グループに分類されるとされています。
- ハンガリー語(Hungarian)
- ハント語(Khanty)
- マンシ語(Mansi)
- フィン・ウゴル語派 (Finnic, 13言語):フィンランド語が含まれるグループです。
- マリ語 (Mari, 2言語)
- モルドヴィン語 (Mordvin, 2言語)
- ペルム語 (Permian, 3言語)
- サーミ語 (Sami, 11言語):地域や部族ごとに多様なサーミ語が存在します。
- サモエード語 (Samoyed, 8言語)
これらの言語グループの地理的な分布を視覚的に理解するためには、以下の学術論文の図が参考になります。この論文では、ウラル語族の地理的分布が地図上に示されており、その広がりを具体的に把握することができます。
Rantanen, T., Tolvanen, H., Roose, M., Ylikoski, J., & Vesakoski, O. (2022). Best practices for spatial language data harmonization, sharing and map creation—A case study of Uralic. Plos one, 17(6), e0269648. 20世紀初期のウラル語族の地理分布(Rantanen et al. 2022 Fig.3より)
論文から引用した20世紀初期のウラル語族の地理分布図を見ると、ウラル山脈(Ural Mts.)を中心に、ペルム語群(Permic:紫)やマンシ語群(Mansi:黄緑)などが位置しているのが分かります。ハンガリー語は地理的に離れているように見えますが、ハンガリー人がヨーロッパの他の民族とは異なる起源を持つとされるマジャル人であることからも、ウラル語族に属することは広く認識されています。
このように地図で確認することで、これまで抽象的だった「ウラル語族」が、具体的な地理的広がりを持つ言語グループとして、より深く理解できるのではないでしょうか。
おわりに:ウラル語族を知ることで広がる言語の世界
今回の記事では、フィンランド語学習者がよく耳にする「ウラル語族」について、その意味や範囲を詳しく見てきました。言葉のルーツを辿り、その地理的な広がりを理解することで、フィンランド語学習がより一層深まるきっかけとなれば幸いです。
言語の分類は非常に奥深い分野であり、今回扱った内容はごく一部に過ぎません。もし、言語の分類学にご知見のある方がいらっしゃいましたら、例えば「フィンランド語とハンガリー語の文法的共通点は、ウラル語族全体に見られる特徴だ」といった具体的な情報や、「サーミ語とフィンランド語の共通点は、単なる借用であって語族の特徴とは言えない」といったご意見など、ぜひお聞かせいただけると嬉しいです。



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