※この記事は昔少しだけ書いていたブログ記事を修正し、転載したものです。
これは、今から10年ほど前の話。
私は、1年間、フィンランドのオウル大学交換留学のため、日本を出発しました。普通の留学生は9月の始業に向けて、7月とか8月とかに出発しますが、私は自分の大学の研究室配属の都合で1月に出発しました。
留学準備編:兄に唆されて…

1月1日。
私は実家にいました。留学半年前にはすでに留学への不安で頭がおかしくなりそうだった私は、実家で家族といることで、心を充電していました。
海外なんて行ったら、もう帰ってこれないかもしれません。海外にはどんな危険があるか知れません。とにかく不安で、寝れない日もありました。私のような肝の小さい、ノミの心臓の持ち主が、海外留学へ行くのは大変なのです。
実家でゴロゴロと、人生最後になるかもしれない正月を楽しんでいると、兄が私を唆しました。
「海外行くなら、良いカメラ買った方がいいぞ〜! せっかくいろんな景色が見れるんだから、勿体無い!」
「そっか〜」
兄は私にお金を使わせることが好きです。そして、私は私で、少しでも楽しい気持ちを増やして、この海外への漠然とした不安を和らげたいという気持ちが働きました。準備不足は嫌でした。
1月3日。
私はデジタル一眼レフを購入しました。もちろん、兄に唆されたからです。「海外行くんだね。頑張ってね」と祖父母からもらった御餞別を私はカメラに注ぎ込みました。
あとで聞いた話ですが、兄は私を唆したくせに、私が本当に一眼レフを買うとは思っていなかったらしいです。むしろ、兄は一眼レフカメラをずっと買いたくて、買いたくて仕方なかったのに、値段で躊躇っていたところを、ポッと出の弟が何も考えずに購入したことに憤っていました。あとで母に「ブーブー言われた〜」と伝えられました。
私は「唆したくせになんぞ!?」と思いました。
成田空港でびっくり:エコノミークラスがビジネスクラス(?)にアップグレード!?
1月5日。
私は成田空港にいました。初めてのひとり海外に、心臓はバクバクでした。もう飛行機が途中で落っこちて死ぬんじゃないかと思っていました。あるいは、英語が話せなくて、異文化の渦に呑み込まれて、疲弊して倒れるではないかと考えました。

伝わりますか? この不安。
航空券を握りしめるようにして、搭乗口に並んでいた私は、なぜかキャビンアテンダントのお兄さんに呼び止められました。
(あ、もしかして私の券に不備があったのかも知れない)
ドキドキの私に、その呼び止めは毒でした。
「こちらに並んでください」
ところが、お兄さんは私を違う列に案内しただけで、それ以上何かを注意されることはありませんでした。何もわかっていませんでしたが、なぜか身分不相応な列に並んでいる感じがします。
そしてゲートを通過して案内された先は、

エコノミーじゃない席でした。
「え、なんで??」
びっくりしすぎて、私はCAさんに席が間違っていないか2回くらい確認しました。
どうやら、間違っていないようです。
慌てて兄に聞いたところ、ダブルブッキングか何かで、席がランクアップしたらしいです。羨ましくて嫉妬されました。私も今では過去の自分を羨ましく思っています。
私のチケットは留学生とか用の帰りの便が自由に変更できるチケット。多分チケット的に私の将来が有望視されたのでしょう。そう。私は将来有望な男なのです。
調子に乗った私は隣に座ったマダムに話しかけました。
「すごいですね。なんか知らないうちにこの席になってしまって。初めてビジネス(?)乗るから、緊張しちゃいます。」
「わかります。私も同じです。エコノミーで買ったのに、こっちに案内されちゃって」
あれ。どうやら、隣のマダムも将来有望らしいです。自分だけではないことにちょっとがっかりしながらも、自分と一緒なことにちょっとだけ安心しました。
そして、私の席には、担当者が付きました。座席に担当者がつくってことあるんですね。
たしか金城さんだか金本さんなんだかという金系列の名前でした。かなり経験を積んだ感じのCAでした。めちゃくちゃ所作が洗練されていて、とんでもなく親切でしたが、どうせなら、経験を積んでいなくてもいいから、フィンランド人のCAに付いてもらいたかったです(ワガママがひどい!)。そもそも制服の色が違ったので、めちゃくちゃランクの高いCAさんだったのでしょうが、当時の私は失礼極まりないことを考えていました。
それは置いておいて。
ここが最後の日本を感じる場所なのだ、という気持ちを噛み締めました。
そして、初めての高級シートでは、めちゃくちゃ日本を感じさせてくれるお料理が出てきました!

「なんだこれは! 豪遊か!?」
と、心の中で叫び声を上げたくなるくらい豪華なお食事が出てきました。留学する前に、こんな贅沢をしていいのでしょうか。幸せすぎて、席だけでなく、肉体と魂までランクアップしてしまって、現地に行く前に天国に召されそうな気分でした。
飛行機の中で、めちゃくちゃ日本を感じました。それも日本では感じたことのないくらいのものです。もはや、ここ(機内)こそが日本だ(←興奮して頭がおかしくなっています)。
留学ってすごい!!
兄からの指令:飛行機のトイレを撮ってこい!謎のミッション遂行記
飛行機が出発して、しばらく経った頃。
私は、あることを思い出しました。
「おお。そうだった!」
じっとしてばかりではいられません。私には、兄から授かった崇高な任務があったのです。私は大きめの荷物を抱えて、いそいそと席を立ちました。隣の将来有望なマダムに「すみません」と言いながら。
トイレに入った私は、抱えた荷物の中から、ブツを取り出しました。
そしてそれを構えて……。
パシャ。
ほとんど初めてちゃんと使う、一眼レフの小気味良い音がしました。

私は兄に頼まれていたのです。
「おい、お前、何日のどこの航空会社のどの便に乗るんだ?」
「JALの1月5日出発のやつ」
「わかった」
兄はパチパチとパソコンをいじると、何かを調べ出しました。
「おお!」
パソコンの画面と睨めっこしていた兄から嬉しそうな声が上がります。
「どうしたの?」
「お前が乗る便は、俺が乗ったことないやつだわ。(飛行機の)トイレの写真撮ってきて」
本人は肯定しませんが、飛行機が好きな兄。飛行機に乗ると、こういう頼まれごとをすることがたまにあります。写真は撮らなくても、中の様子を聞かれたりします。
兄には留学関係で相談に乗ってもらっていたりして、少しお世話になっていました。
だから、私は渋々頷きました。
「わかった」
「ちゃんと買った一眼で撮れよ」
それも、まさかの一眼カメラをご指名でした。
兄の趣味に付き合わされることになった私は、飛行機に乗ってもドキドキが止まりませんでした。考えてもみてほしいのです。飛行機に乗って、一眼を持ってトイレに篭って写真を撮る、なんとも言えない恥ずかしさを。しかも写真を撮るときには音が鳴ります。
CAさんとかに聞こえていないでしょうか??


別に人に見られているわけではないのですが、CAさんに不審者と思われていないかと思って、めちゃくちゃ恥ずかしかったです。
とても日本で人気のあるフィンランドのMarimekko社のUnikko柄の紙ナプキンもトイレに置いてありました。私は他の柄の方が良かったなあと思ったのですが、トイレにさえこんな気配りがしてあることに感動しました。
ちなみに、もっと後の話ですが、飛行機のCAさん用の収納座席の写真がほしいと言われて、その写真を撮らされたこともあります。その時は、お客さんが全員降りるのを待って、両手でカメラを構えて、CAさんに「どうしました? 大丈夫ですか?」と言われながら、写真を撮りました。こちらを見る、CAさんの目がどこか訝しげな色を帯びているように感じました。

この写真を撮ったときは、「どうしました? (頭)大丈夫ですか?」に聞こえるくらい恥ずかしかったです。兄にたびたび助けられているせいで、いつも謎の辱めを受けています。
なんだか、私の将来は、有望でない感じしかしないです。
ついにフィンランド到着!極夜の空港と留学初日のドタバタ
飛行機の中は暇なので、航行ルートマップなどを見ながら時間を潰します。飛行機乗ると、なんだか嬉しくなって、この写真を撮ってしまいますよね。


今は気軽に見れない、ロシアの太陽は本当に綺麗でした
そうして時間を潰すこと10時間半くらいで、Helsinki-Vantaa空港(HEL)へ到着しました。今はロシアを通れないせいで、13時間もかかることを考えると、あの頃は良かったですね。

淡いピンク色と水色が混ざった、フィンランド色の空が私を出迎えてくれました。私は、JALよりFinnairが好きだなあ、なんてVantaa空港に停泊している飛行機を見ながら思いました。
Finnairの好きなところは、Mustikka(ブルーベリー)のmehu(ジュース)が飲めるところです。最高です。このブルーベリー・ジュースを飲めると考えるだけで、ニマニマしちゃいます。妄想とか、追憶だけで幸せな気持ちになれるなんて、究極のSDGsなんじゃないかとニマニマしながら考えてしまいます。
私の留学先は、フィンランド東部の町Ouluにあるオウル大学Oulun yliopistoです。なので、乗り継いで、ここから私はOuluに飛びました。私がヘルシンキ・ヴァンター空港に着いたのは、15時。そして、乗り継ぎの便は17:00発でした。乗り継ぎのために、入国審査や手荷物チェックを終えて、Oulu行きのゲートに着いた時には、外はすでに真っ暗でした。
それもそのはず。時期は1月。フィンランドの夜がとても長い極夜の季節です。
そして、Oulu行きの搭乗口付近は、すでに留学生と思しき同世代でいっぱいでした。フィンランド語の方が少ないんではないかと思うくらい、空港内に飛び交う英語。留学生に囲まれ、英語が飛び交うことに緊張しすぎて、写真を撮る余裕はありませんでした。
私はそこで、空港のwifiを使って、kummiグループ(現地の学生サポーター=kummi studentを中心とした留学生グルーブ)と合流。日本で聞く留学生の英語より全然早い英語のスピードに目を白黒させながら、聞くのに必死で全然会話に参加できませんでした。
「ひえ〜」
と思いながら、クラクラとしながら、飛行機に乗り込み、気がつくとオウルに到着していました。オウル到着は18時過ぎ。飛行機だと一瞬でついてしまいます。
そのまま、kummi groupでまとまって、タクシーに乗ることに。近いところから順番にタクシーから降りていく私たち。最後まで残った私が降りた先には、犬を連れたkummi student(留学生現地学生サポーター)の友達が待っていました。 kummi studentが来てくれると聞いていたのですが、話が違います。なんだかよくわからないまま、鍵を持ったその女性に連れられて、私はouluのアパートに到着しました。
真っ暗な部屋。ルームメートはまだいませんでした。
「ああ、ここから始まるのか!」とか思う人は余裕がある人です。
私はとても疲れていました。
「ご飯が食べたい!」「寝たい!」ということしか考えられませんでした。なので、考えるのはまた明日にすることにしました。
私の留学生活のスタートはこんな感じです。他の人はどんな感じなんでしょう??
それでは〜。



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