大雪山はもはやフィンランド? 北欧のベリーが自生する理由と『食べられない』日本のルール

大雪山はフィンランドだった? 北欧のベリーが自生する理由と『食べられない』日本のルール_表紙 アジア

 こんにちは。ズッキーです。

 2025年8月に、北海道の大雪山に行きました。

 大雪山旭岳では、ロープウェーに乗ってどんぶらこと運ばれて、標高1600mの5合目まで一気に行けます。

 8月の大雪山は、実りの季節。さまざまなベリーが実っていました。国立公園なので、植物の採取は禁止されているせいで、私は指をくわえて見ているだけしかできませんでした。まあ、そういう話です。

 

北海道の高山帯はフィンランドの気候帯に近いっぽい

 私の体感として、北海道の高山帯はフィンランドの気候に似ている気がしています。しかし、体感だけ語っても良くないので、もう少し論理的に見てみましょう。

 

気温と標高、気温と緯度の関係

山頂は寒かったので、オランダで買ったストロープワッフルをお茶と一緒に食べました

 一般に、気温と標高、気温と緯度に関して、以下のことが言われています。

  • 標高が100m上がると、0.6℃ほど気温が下がる
  • 緯度が1度北上するごとに、気温は1度下がる

気温の逓減標高と気温の関係気温のお話参照

 

大雪山の標高1600mの気候

 このことから、大雪山の標高1600m(緯度43.6度)について計算してみると、

1600 (m) × -0.6/100 (℃/m) × 1/-1 (度/℃) + 43.6 (度) = 53.2 (度)

 つまり、大雪山標高1600m地点の気候を緯度換算すると、北緯53.2度(樺太北部くらい)の気温であると計算できます。

 これをヨーロッパに持ち込むと、オランダ北部のフローニンゲンくらい。フィンランド南部のヘルシンキの緯度は、60.3度くらいなので、フィンランドより微妙に南です。

 

「あれ、予想と計算が合わない」(੭ ᐕ)?

と思ったのですが、「いや、待てよ」と思い直します。

 

 メキシコ暖流のおかげで、ヨーロッパって、緯度のわりに気温が高いはずですよね。

 

 でも、困りました。

 どれくらい高くなるのか知りません。

 

気温で比較

 というわけで、直接平均気温を比べてみることにしました。

 

 ……最初から、こうすればよかった。

 比較するのは、大雪山標高1600m付近の姿見(赤系の色)とフィンランド北部のイナリ(青系の色)。

大雪山とフィンランドの気温
大雪山とフィンランドの平均気温比較のグラフ(Cf. イナリの気温姿見の気温

 統計処理はしていませんが、グラフを見る限り、この2つの地点の気温は、概ね同じといってもいいのではないでしょうか。冬の月に関しては、大雪山の姿見の方が気温が低いこともあるくらいです。

 

北海道大雪山に自生するベリー

 というわけで、フィンランドと気候がよく似た、北海道大雪山1600m付近に生息するベリー類を見ていきましょう。

 

クロマメノキ / クロウスゴ Vaccinium spp.

クロマメノキ / クロウスゴ Vaccinium spp. この写真の株は葉が紡錘形
クロマメノキ / クロウスゴ Vaccinium spp. この写真の株は葉が円形
和名クロマメノキクロウスゴ
英名Alaska blueberry などbog bilberry など
学名Vaccinium uliginosumVaccinium ovalifolium

 クロマメノキとクロウスゴ、見分けられなかったので、両方載せています1。クロマメノキを浅間山麓ではアサマブドウと呼ぶそうです。ツツジ科スノキ属2の仲間です。

 英語でいうBilberry(ビルベリー)の仲間です。

ロヴァニエミ近郊の森の紅葉したビルベリー(mustikka)
ロヴァニエミ近郊の森の紅葉したビルベリー(mustikka)

 フィンランドのビルベリー(和名:セイヨウスノキ、学名:Vaccinium myrtillus)と見比べても私には違いがわからないくらい、見た目が似ています(フィンランドの方が少し華奢?)。

 北欧産ビルベリーは、ブルーベリー(Vaccinium cyanococcus)と近縁なので、「ブルーベリー野生種」と表現されることがあります。わかさ生活のブルーベリーアイの原料です。

 

 

コケモモ Vaccinium vitis-idaea

和名コケモモ
英名Lingonberry
学名Vaccinium vitis-idaea

 英語では、Lingonberry(リンゴンベリー)と呼ばれます。

 酸味が強いベリーです。

 フィンランドで、ベリーワインを作ろうとして、リンゴンベリーを大量に入れたせいで、発酵が進まず、苦い思いをしたベリーです。というのも、このベリーには、発酵を抑える酵素が含まれるらしく、ただの甘酸っぱいジュースになりました。

 私は好きですが、酸っぱいので、たくさん食べるには不向きかもしれません。

 

ガンコウラン Empetrum nigrum

和名ガンコウラン
英名crowberry
学名Empetrum nigrum

 英語では、Crowberry(クロウベリー)と呼ばれます。

 ジャリジャリしたベリーです。

 ノルウェーでも、アラスカでも、口に入れました。味は甘いのですが、なんといってもジャリジャリしたタネの食感が口に残るので、好みが分かれるベリーです。

 

フィンランドと日本の文化の違い

 ここまでベリーを見てきたのですが、悲しいことに、大雪山ではこれらのベリーを食べることはできません。

 大雪山のこのエリアは国立公園。

 日本の法律上、許可のない植物の採取は禁止されています。

 自然享受権(Jokamiehenoikeus)によって、誰でも自由に摘めるフィンランドとはえらい違いです。

 日本におけるビルベリーは、まさに、高嶺の花。

 (生えてるの高山の上だしね)

 私は、「これ、美味しいのに」と思いながら、泣く泣く下山しました。

 

 

まとめ:大雪山で出会えるフィンランド

大雪山のベリーたち
  • ルールの違いに注意:フィンランドとは異なり、日本の国立公園では採取禁止
  • 気候のシンクロ:大雪山1600m付近は、平均気温で見るとフィンランド北部のイナリとかなり一致
  • 垂直分布の魔法:標高を上げることで、数千キロ離れた北欧の植生(ベリー類)を擬似的に体験できる
  • ベリーの種類:クロマメノキ(ビルベリー近縁)、コケモモ(リンゴンベリー)、ガンコウラン(クロウベリー)が自生

 また、フィンランドで、手を紫色にさせながら、ビルベリーを頬張りたくなりました。

 それでは〜。

 

 

参考文献

  • 『新ヤマケイポケットガイド③ 高山の花』永田芳男 伊地知英信 著 山と渓谷社 2014
  • 『ヤマケイポケットガイド⑥ 山菜・木の実』水野仲彦 著 山と渓谷社 2003

 

脚注

  1. クロマメノキとクロウスゴ
    大雪山の旭岳ロープウェーにはクロウスゴという表記があり、ビジターセンターには、クロマメノキの標本が展示されていました。そのため、両種ともに、大雪山に生息していると判断しました。こちらのサイトの見分け方を参考にしたのですが、自信がないので諦めました。 ↩︎
  2. ツツジ科スノキ属
    クロマメノキ、クロウスゴのほかに、スノキ属では、ナツハゼ、シャシャンボ、スノキ、ウスノキなどが食べられる木の実をつける。 ↩︎

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