こんにちは。ズッキーです。
今回は、キンデルダイクの風車の歴史、風車の仕組みなどを、めちゃくちゃ詳しく解説しちゃいます。内容は、すこしマニアックです。
ただ、「キンデルダイクがどういう土地なのか?」や「風車ってどういう仕組みなの?」といった疑問に答えたつもりです。読みたいところだけでも、読んでもらえると嬉しいです。
キンデルダイクとは?
オランダ南部、ロッテルダム郊外に位置するキンデルダイクの風車群は、18世紀に構築された、風力による排水システムです。

オランダは、国土の4分の1が海抜より低い国。
キンデルダイクでは、その低地を守る19基の風車が、今なお稼働可能な状態で維持されています。歴史的な景観を保ちつつ、現在も実用的なシステムとして機能し続けている点が評価され、ユネスコの世界遺産に登録されています。
18世紀には、この地に100基以上の風車が並んだそうですよ!
キンデルダイク=エルスハウトの風車網
世界遺産としての正式名称は「キンデルダイク=エルスハウトの風車網」(Mill Network at Kinderdijk-Elshout)です。
「キンデルダイク」が立ち並ぶ風車群を、「エルスハウト」がその基盤となる干拓地(ポルダー)をそれぞれ象徴しています。これは、風車という造形物だけではなく、それらを用いて水を管理し、土地を利用してきたシステムそのものが世界遺産であることを示しています。
キンデルダイクの名前の由来
キンデルダイク(Kinderdijk)は、“kinder”「子供」と“dijk”「堤防」が組み合わされた言葉です。これは 1421年11月に起きた聖エリザベス洪水(Sint-Elisabethsvloed)で、赤ちゃんと猫の入ったゆりかごがこの地域の堤防に流れ着いたという伝承に由来していると言われています。
(この伝承をモデルにした猫とゆりかごの銅像が運河の上に建っています)
おそらく英語の“kindergarten”(幼稚園)の“kinder”と語源は同じでしょう。同じゲルマン系の言語だし。
なぜキンデルダイクに風車が作られたのか
オランダは、ライン川(全長1,233km)、マース川(925km)、スヘルデ川(350km)の河口に位置しています。
これらの河川は長く、傾斜が緩やかで、河口付近には広大な三角州(デルタ)が形成されました。そのため、オランダの土地の大部分は以下の特徴を持ちます。
- 欧州各地の水が集まる終着点
- 水分を含みやすい湿地・泥炭地

キンデルダイク1は、ライン川とマース川の河口にあり、ちょうど、デルタ地帯の真っ只中にある土地です。
上流のドイツやフランスで、大雨が起きると、その水が最終的にこのキンデルダイクにも押し寄せてくることになります。この不安定な土地を居住可能なものとして維持するためには、風車による強制的な排水システムが必要不可欠でした。
キンデルダイクと水との戦いの歴史
泥炭湿地という土地の宿命
キンデルダイクは、前述の通り、泥炭湿地でした。泥炭湿地は、スポンジのように、水をたっぷりと含み、水で膨らんだ土地です。

10世紀ごろから、人の居住が始まったのですが、耕地が作られ、排水が進むと、乾燥が進み、次第に地盤が沈下していきます。
この辺りも、元々は海抜1〜2mほどあり、重力だけで自然に排水できていたそうです。しかし、時を経るにつれて、地盤が沈下していき、水が排出できなくなり、人工的な汲み上げが必要となります。
そこで、15世紀前半から、風車が導入され始めます。
排水用風車の発明

| 年代 | 出来事 | 内容 |
| 13世紀 | 風車伝来 | フランス・ドイツから伝来 |
| 1407年頃 | 排水用風車の発明 | アルクマールで出現 |
| 1526年 | 風車の改良 | 風向きにより風車の羽根の向きが変えられるように |
| 17世紀 | スクリュー式ポンプ開発 | スクリュー式ポンプ(アルキメデス・スクリュー)により排水効率UP |
これにより、泥炭の採掘(燃料など)と干拓が進みます。17世紀には、2万7,000haの土地が獲得されたといいます。
こうして、ただでさえ海抜近い土地が、干拓によりさらに低くなり、その土地を維持するために、風車は必要不可欠になりました。
水委員会(Waterschappen)
水と戦いは、風車だけでは成り立ちません。
それを運用する組織的な仕組みが必要です。
1277年、ホラント伯フロリス5世は、地域の領主たちを統合し、共同で堤防の維持管理と排水を行う組織を創設させました。それくらい、一致団結しないと、土地を確保できなかったわけです。
これを水委員会(Waterschappen)と言います。
地域みんなで水管理をする自治組織です。
水委員会は、最強の敵「水」に対抗するために、費用を分担し、民主的な議論を通じて合意を形成する場となりました。
(この協力体制が、現代オランダの合意形成型社会ポルダーモデルの原型とされる)
風車ってどういう仕組みなの?

排水用風車は、風車の羽根が回転することで、歯車が連動し、排水ポンプを稼働させます。排水ポンプが回転することで、水が揚水される仕組みになっています。
排水用ポンプ

オランダの風車で使われる排水用ポンプには、次の2種類があります。
- ペダルホイール(Scheprad)
- アルキメデス・スクリュー(Vijzel)
元々は、ペダルホイールという、日本でいう水車のようなものを回転させることで、水を押し出すように排水していました。
17世紀に、「アルキメデスのネジ」から発想を得た、アルキメデス・スクリューというポンプを発明したことで、水を巻き込むように揚水する仕組みを生み出し、高い排水能力を生み出すことに成功しました。
物理が苦手なので、なぜ効率がいいかはわかりません(水のロスが少ないとか??)。
誰か教えてください〜。( ;ㅿ; )
階段式排水

ここまで見てきたように、風車は、水を汲み上げるのに、使われました。
土地に区画を作り、区画を堤防で囲みます。
そして、その区画内から、風車を動力にした排水ポンプで、水を水路に排水します。排水が進むにつれて、さらに土地が沈むため、さらに内側に風車が設置されました。
最も低くなった土地から、直接水を排出するのは難しいため、リレー方式で水を一段ずつ上げるようなイメージで、風車を2〜3段階に設置して、水を排出します(階段式排水)。
そのため、水路ごとに少しずつ水面の高さが異なります。
キンデルダイクの風車群の場合

展示されていた模式図では、レック川の水面の標高は0.3m。風車1基あたりの揚水能力は、1〜1.5mであるため、最も低いブロックヴェア風車のある水路の標高 −2.1m(図の左下)から、レック川へ水を排水するには、2段階以上で風車を設置する必要があります。
模式図に従えば、キンデルダイクでは、ブロックヴェア風車で1.1mほど揚水し、ネーダーヴァールト風車群(図の左上)でさらに1.5m揚水することで、レック川と高低差をつくり、川に排水する仕組みになっています(現在は、主に機械で揚水)。
風車にそれだけの揚水能力があるのもびっくりだし、この仕組みを考えたオランダ人も凄すぎる!!
キンデルダイクに実際に行ってみた話

2025年6月に、キンデルダイクに行きました。
とてものどかな場所で、ほっこりしました。風車が立ち並ぶ風景は壮観です。かつてのオランダの風景を残すものでありながら、この風車たちが現役で働けるということにびっくりします。
牧草地と水辺のあるキンデルダイクは、家畜がのびのびと暮らす場所であり、鳥が子育てに励む場所でもありました。
▶︎ベネルクス旅行3日目④:世界遺産キンデルダイクでほのぼの散策|風車と家畜と野鳥たち

また、キンデルダイクがユネスコ世界遺産なのは、それが過去の遺産ではなく、現在まで続く景色であることです。近代的なポンプも含めての世界資産だということを知っておいてほしいなと思います。

ふと後ろを振り返ると、風車と遠くのビルが同じ景色の中にいて、現在とのつながりが感じられます。
▶︎世界遺産キンデルダイクの2つの風車ミュージアムを見学した話
キンデルダイクの見どころ(観光)

キンデルダイクの見どころは、なんといっても、18世紀から続く19基の風車がすべて稼働可能な状態で並ぶ、世界遺産の広々とした風景です。まあ、一回で視界に入れられるのは、せいぜい8基くらいなんですけど。
世界唯一の絶景であることは間違い無いです。
くわしい散策スポットはこちらの記事をどうぞ↓
▶︎キンデルダイク観光ガイド|おすすめ散策ルート・見どころ・チケット情報
キンデルダイクへの行き方
ロッテルダム市内からは、次の3つの行き方がメインかなと思います。
- メトロ+バス+渡し船(Capelsebrug経由)
- 鉄道+バス(ドルドレヒト経由)
- トラム+ウォーターシャトル
▶︎ロッテルダムからキンデルダイクへの行き方|メトロ+バス+渡し船
▶︎キンデルダイク〜ロッテルダムを船で移動|ウォーターバスとウォーターシャトルの違い
排水技術と現代とのつながり
海面上昇と地盤沈下の加速
オランダにとって、排水は過去の問題ではありません。
気候変動による気温上昇によって、海面が上がれば川の水位も上がり、水門を開けても水が逆流する恐れがあるからです。
海面の上昇は、河川への自然排水をこれまで以上に、難しくしています。加えて、泥炭地の沈下は現在も進行しており、ポルダー(干拓地)を維持するためには、より効率的な排水システムが常に求められている状態です。
デルタプログラム 2026:未来への備え
オランダ政府は、海水面の上昇や土地の沈下に対応するため、「デルタ・プログラム」を策定し、2050年、さらには2100年までの長期的な適応戦略を進めています。
たとえば、
- Room for the River:川を堤防で狭めるのではなく、意図的にスペースを広げて洪水を制御する新しいアプローチ
- 技術のハイブリッド化:風車という伝統的な知恵と、太陽光発電やAIによる水位管理などの最新技術を組み合わせた、持続可能な水管理
のような方法を考えているようです。
オランダの水との戦いはまだまだ続くようです。すごいですね。
他の国の取り組みをみていると、日本の将来も気になりますね。日本は、将来に向けた計画をきちんと立てられているのでしょうか。心配だ。
まとめ
- 18世紀から続く19基の風車が、今なお稼働可能な状態で並ぶ唯一無二の世界遺産
- キンデルダイクは、川に挟まれた沈み続けている土地
- 土地を守るため、風車をリレーさせる階段式排水の仕組みが学べる
- 水委員会(Waterschappen)が、水との戦いを通じてオランダ社会の礎を築いた
- 伝統的な風車と、最新のAI・太陽光技術を組み合わせたオランダの「未来の水管理」に想いをはせられる
いかがでしたか?
「キンデルダイクがどういう土地なのか?」や「風車ってどういう仕組みなの?」など、世界遺産キンデルダイクについての疑問が一つでも解決できたなら、嬉しいです。
そして、水管理の仕組みが、現在までつづくオランダの社会システムの基礎になっていることをふんわりとわかってもらえればいいなと思っています。
それでは〜。
参考文献
- 酒井多加志. (2013). オランダの官製地図を読図する キンデルダイクを事例として. 地理学論集, 88(1), 1-5.
- 『図説 オランダの歴史』佐藤弘幸 2012 河出書房新社
- “Water management in Kinderdijk” kinderdijk.nl 2026.5.18アクセス
脚注
- キンデルダイクという土地
キンデルダイクのあるアルブラッセルワールト地方(Alblasserwaard)は、レク川(Lek)とノールト川(Noord)という二つの主要な河川に囲まれています。この地方全体の雨水や地下水は、地形的に最も低い地点の一つであるキンデルダイク付近に集まる傾向があります 。つまり、キンデルダイクは排水の拠点として選ばれたというよりも、物理的に「水が逃げてくる場所」であったがゆえに、排水のための最終防衛ラインとでも言うべき場所で、排水拠点とならざるを得なかったわけです。 ↩︎



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