日本でオーロラが見られます!
そう聞くと、「どうせ天体望遠鏡のような、高価な機器がないと見られないんでしょ?」と思ってしまいます。
でも、実は、日本でも肉眼でオーロラが観測された記録がいくつか残されています。しかも、私たちが写真でよく目にするカーテン状のものとは違い、天に広がるような扇形をしているものが見られています。
この珍しいオーロラは「低緯度オーロラ」と呼ばれ、日本でも過去に何度も観測されてきました。
日本でもオーロラは見えるのか?その答えは「低緯度オーロラ」

オーロラという名前を付けたのは、1619年に論文を発表したガリレオ・ガリレイだと言われています。
しかし、オーロラの記録自体は、それよりはるかに古くから存在します。
古代ギリシャや古代ローマでは、紀元前5世紀ごろからオーロラの記録が残されており、ヒポクラテスやアリストテレスといった有名な人物もその記録を残しています。

古代のギリシャやイタリアは、日本の北海道や東北と同じくらいの緯度です。珍しい現象だったとはいえ、昔からオーロラが見られていたことがわかります。
また、中国では紀元前26世紀の記録が最も古いとされています。
このように低い緯度で見られるオーロラを低緯度オーロラと呼びます。
『日本書紀』と『明月記』に記された「赤気」とは?
日本で最も古いオーロラの記録は、『日本書紀』にまで遡ります。

一二月の庚寅の朔に、天に赤気有り。長さ一丈余なり。形雉尾に似れり。
『日本に現れたオーロラの謎』(片岡龍峰 2020)内の『新編日本古典文学全集日本書紀(2)』引用文より
ここに記された「赤気」が、オーロラだと考えられています。その形がキジの尾に似ているという記述は、日本っぽくてとてもいいですよね!
また、鎌倉時代の日記『明月記』にも、より明確にオーロラだと思われる「赤気」の記述が残されています。
著者は、百人一首の選者としても有名な藤原定家1です。
一二〇四年二月二一日、晴れ。日が暮れてから北および北東の方向に赤気が出た。その赤気の根元のほうは月が出たような形で、色は白く明るかった。その筋は遠くに続き、遠くは火事の光のようだった。白いところが五箇所あり、赤い筋が三、四筋。それは雲ではなく、雲間の星座でもないようだ。光が少しも陰ることのないままに、このような白光と赤光が入り混じっているのは不思議なうえにも不思議なことだ。恐るべきことである。
『日本に現れたオーロラの謎』(片岡龍峰 2020)
空に広がる赤い筋が、まるで火事のようだったと表現されています。
この「赤気」の絵は、江戸時代の『星解』という本に描かれており、扇形をしていることがわかります。
また、『猿猴庵随観図絵』という古書には、こんな記述も残されています。

高き所に登りてみれば赤気のうちに物の煮ゆるか音聞ゆ
(筆者訳:高い場所に登ってみると、赤気の方から何かが煮えたぎるような音がした)
北欧先住民族のサーミの伝承でも、オーロラからシューという音が聞こえるという話があります。この記述が本当にオーロラの音だとしたら、面白いですよね!
なぜ『明月記』の歴史的記録がオーロラだとわかるの?
オーロラは、太陽から吹き出す太陽風が地球の大気に衝突して光る現象2です。そして、太陽風が爆発的に噴き出す場所が、太陽表面の黒点です。
黒点が大きいほど強い太陽風が地球に到達し、オーロラは強く輝きます。
『明月記』に赤気が記された1204年の同じ日、中国ではこんな記録が残されています。
一二〇四年二月二一日太陽の中にことごとく黒点がありナツメのように大きい。
通常の黒点がゴマに例えられるのに対し、ナツメほどの大きさ(小さいりんごくらい)だったということは、歴史上でも稀なほど巨大な黒点だったと考えられます。
つまり、『明月記』の「赤気」は、巨大な黒点から放出された強力な太陽風によって引き起こされた、低緯度オーロラだった可能性がめちゃくちゃ高いのです。
現代日本でもオーロラは見える?観測例と最新情報
こうした歴史の記録を紐解くと、私たちが日本でオーロラを見るには、次の2つのチャンスがあることがわかります。
- 太陽の活動が活発になる瞬間を待つ
太陽の活動は、約11年周期で活発になります。最近では、2023年から2025年がそのピークにあたり、実際に北海道でオーロラが観測されています(りくべつ宇宙地球科学館HPより)。
また、100年に一度ほどのペースで東京でも観測された記録があり、次回はそう遠くない未来かもしれません。
▼YouTubeの低緯度オーロラの動画があったので、ご覧ください。
- 地球の磁気が弱まるのを待つ
地球の磁気が弱まると、オーロラが見られる緯度が低くなります。
現在、地球の磁力は少しずつ弱まっているので、このままのペースでいくと、700年後には日本がオーロラ帯に入るという説もあります。
ということは、あと数百年なんとか生き延びることができれば、日本でも簡単にオーロラが見られるようになるということです!! すごい!!
えっ、むり??(*゚∀゚*)
歴史と科学が結びついた日本のオーロラの話、いかがでしたか?
この記事を読んで、片岡龍峰さんの『日本に現れたオーロラの謎』に興味を持った方は、ぜひ読んでみてください。
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「なぜ、日本で見えたオーロラは扇形なのか?」「屋久杉の年輪でオーロラの歴史がわかる?」「『日本書紀』の赤気はオーロラなのか?」
そんな疑問の答えがこの本の中に書かれています。「へえ〜」ってなることがいっぱいで、本当に面白い本なので、ぜひ手にとって読んでみてください!
もっと詳しく知りたい方へ:オーロラ関連リンク集
参考文献
- 『オーロラの物理学入門』小口高 2010 名古屋大学太陽地球環境研究所
- 『日本に現れたオーロラの謎』片岡龍峰 2020 化学同人
脚注
- 歌人 藤原定家
来ぬ人をまつほの裏の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ
【現代語訳】
いつまで待っても来ない人を待って、松帆の浦の夕凪の海辺で焼く藻塩のように、私の身は恋焦がれています。
(『知識ゼロからの百人一首入門』有吉保監修 2005 幻冬社の新勅撰集 権中納言定家より)
私自身は、歌会始に何度か応募して気がついたのですが、短歌のセンスが圧倒的にありません。なので、百人一首を詠むと、その中に散りばめられた教養と、それを常日頃から考えている当時の人々の暇人っぷりにいつも感心しています(褒めているつもり)。 ↩︎ - オーロラの発生原理
①太陽から太陽風が噴き出る
②太陽風はプラズマ粒子を地球に運ぶ
③プラズマ粒子が地球の磁場によって、地球の夜側に溜まる
④プラズマ粒子が磁気線に沿って、地球の極域に流れ込む
⑤プラズマ粒子が地球大気の原子や分子にエネルギーを渡す
⑥酸素原子や窒素分子が発光して、オーロラができる ↩︎



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