こんにちは。ズッキーです。
オーロラに関する本をいくつか読んで気がついたことがあります。それは、Kp値だけでは、オーロラの予報をするのに、不十分なのではないかということです。
Kp値だけではない!? オーロラ発生に使える指標
天気予報のように、オーロラにはオーロラの発生を予想する、オーロラ予報があります。そのオーロラ予報に使われる指標がKp値です。
Kp値というのは、地磁気の乱れを示す指標のことです1。
もう少し詳しく説明すると、オーロラは電気が流れて色を発している現象なので、電磁石のような働きをして、地球の磁気を乱します。これを利用して、オーロラの活動を予測するために、地磁気の乱れを各地で測定しています。これを元に作られた指標がKp値です。多くのオーロラ予報サイトでは、このKp値を用いて、オーロラが発生するかどうかをみなさんにお知らせしています。
Kp値は0〜9までの数値で表され、9に近いほど、オーロラの発生確率は高くなり、オーロラが鮮明に見える確率も上がります。
Kp値についての詳細は、こちらの記事をご覧ください。

しかし、リアルタイムでオーロラを見るときには、このKp値だけでは物足りないことが多いです。Kp値は3時間ごとの平均で提示されるため、細かな時間枠には対応していません。そのため、Kp値が高くてもオーロラが出なかったり、逆にKp値が低くてもオーロラが出ることがあります。そんなときに役に立つのが、太陽風速度です。
太陽風ってなに?
実は、オーロラの発生の仕組みはまだわかっていないことが多いです。でも、わかっていることもあります。それは、太陽にあるコロナ・ホールという黒い部分から吹き出す太陽風がオーロラの発生原因となっているということです。

太陽風というのは、電気を帯びた粒子であるプラズマ粒子の流れのことで、太陽からは絶えずこの太陽風が地球に吹き付けてきています。この太陽風が地球の磁気圏に入ると、磁場の影響で地球の夜側にプラズマ粒子が溜まります。
このプラズマ粒子が地球の磁気圏の夜側に溜まる領域のことをプラズマシートと言います。
プラズマシートに蓄積されたプラズマ粒子の量が多くなると、溜まって押し出されたプラズマ粒子が、地球の磁場の影響で極地方から地球に降り注ぎます。これが、地球の大気の成分とぶつかることでオーロラが発生するのです!
難しい話はこれくらいにしましょう。
簡単にいうと、太陽風はオーロラの元になるものです。
ここで重要なのが、この太陽風が地球に吹き付ける速さが速いほど、強いエネルギーが発生しているので、強いオーロラが発生するということです。つまり、太陽風の速度が、オーロラ発生予測の指標の一つになるということです。
太陽風速度とオーロラ発生の関係
『一生に一度は見たい絶景の楽しみ方 オーロラ・ウォッチングガイド』(2018)という本によると、太陽風の速度とオーロラの発生の関係について下の表のように書かれています。
| 太陽風の速度(km/秒) | オーロラ発生評価 |
| 600以上 | すごい! |
| 500〜600 | 期待できる |
| 400〜500 | まあまあ |
| 350〜400 | ちょっと弱い |
| 350以下 | 厳しそう… |
この太陽風速度は、地球から約150万km彼方にあるDSCOVR衛星から送られてきていて、現在の速度をリアルタイムで見ることができます。
この太陽風速度が、衛星で観測されてから地球に到達するまでの時間は、太陽風の速度によって違います。また、太陽風の速度も途中で変動するので、正確な時間はわかりません。とはいえ、目安としては計算できるので、太陽風の速度が一定だとした場合の地球への到達時間を下の表に掲載しました。
| 太陽風の速度(km/秒) | 到達時間(分) |
| 600 | 約41.7分 |
| 500 | 約50.0分 |
| 400 | 約62.5分 |
| 350 | 約71.4分 |
この表の結果を大雑把にまとめると、太陽風速度が観測されてから地球に到達するまでの時間は、概ね1時間くらいだとわかります。つまり、太陽風速度を見れば、約1時間以内のリアルタイムのオーロラの発生状況を予想できることになります。
太陽風の磁場強度と磁場の向き
Kp値や太陽風の速度について、知識がついてくると、
「よくわからんけど太陽の活動が活発で、太陽風がめちゃくちゃエネルギーを持っていれば、オーロラは出るんだな。いえーい!!\( ᐙ )/」
と単純に納得してしまいがちなのですが(←私です)、実はオーロラの出現に影響を与える要因はもう一つあるのです。
それが、太陽風の磁場です。
地球の磁場と太陽風の磁場
小学校で、方位磁針というものを習ったと思います。
「磁石のN極は北、S極は南を向くんだよ〜」
と私も先生に教えてもらいました。中学生くらいになって、これがNorthとSouthの頭文字だと気がつくわけで、
「『北』極は北、『南』極は南を向くって、そりゃそうだわ!」
と納得するわけであります。
それはさておき、この話からもわかる通り、地球の磁場は北を向いています。
私が本を読んで理解した限りでは、地球はどうやらこの磁場があることによって、太陽のプラズマ粒子から守られた状態にあるようです。この状態は『オーロラ・ウォッチングガイド』では、外は嵐でも、家の窓が閉まった状態と喩えられています。
一方の太陽風に関してです。太陽風が電気を帯びたプラズマ粒子であることからもわかる通り、太陽風にも磁場があります。しかし、太陽という奴はややこしい奴でして、磁場が南を向いたり北を向いたり、あっちゃこっちゃ向くんです2。また、この太陽から発せられる太陽風の磁場も地球上の我々からみると、気まぐれに南に向いたり北に向いたり、その時々で変化します3。
ここでオーロラの話に戻ります。
太陽風の磁場が地球の磁場と逆向き、つまり、南を向いていると、地球の磁場の窓が開けられて、プラズマ粒子が地球に降り注ぎやすくなります4。ちょうど、嵐のときに部屋の窓を開けると、外の雨風が部屋に吹き込むような状況です。オーロラはプラズマ粒子が大気の原子や分子ぶつかって発生するので、磁場の窓が開くと、地球でオーロラが発生しやすくなります。
難しい話をしましたが、簡単にまとめると、太陽風の磁場が強く南を向いていると、オーロラが発生しやすいということです!!
これに関するNASAの動画があったので、お時間があればご覧ください(英語ですが)。
太陽風の磁場の基本がわかったところで、太陽風の磁場強度の話に移りましょう。
太陽風の磁場強度(Bt)
太陽風速度の話と同じ『オーロラ・ウォッチングガイド』(2018)によると、太陽風の磁場強度とオーロラの発生の関係について下の表のように書かれています。
| 磁場強度Bt(nT) | オーロラ発生評価 |
| 10以上 | すごい! |
| 5〜10 | 期待できる |
| 3〜5 | まあまあ |
| 3以下 | 厳しそう |
この磁場強度Bt5という指標も先ほどの衛星からリアルタイムで送られてきます。単位はnT(ナノテスラ)というもので、地磁気の強さを表す単位です。ここでは、太陽風の磁場強度が強ければ強いほど、つまり、地球の磁気圏に与える影響が大きければ大きいほど、オーロラが発生しやすいことがわかります。
太陽風の磁場の向き
また、太陽風の磁場の向きに関しても、同じ衛星データから読み取ることができます。
| 太陽風磁場の向き | オーロラ発生評価 |
| 南(マイナス) | 期待できる |
| 北(プラス) | 厳しそう |
1日を通して見たときに、ずっと南を向いているか、南向きと北向きに繰り返し切り替わっているときは期待できるそうです。意外とこの磁場の向きがオーロラの発生にかなり影響を与えているようなので、速度と一緒にデータを確認した方が良いです。
この磁場の話に関しては、サイトによっては、惑星間磁場(IMF:Interplanetary Magnetic Field)と表現されることがあります。オーロラを扱うサイトであれば、ここでご紹介した内容と同様のことを説明しているだけなので、戸惑う必要はありません。
この章で説明した内容に関する、具体的なデータの読み取り方法については、次の章で説明しようと思います。
実際にリアルタイムで太陽風速度を見てみよう
それでは、実際に太陽風のデータを見てみましょう。おそらくよく見られているサイトは、アメリカ海洋大気庁NOAAの「Real Time Solar Wind」かspaceweatherlive.comのホーム画面でしょう。
NOAAの太陽風データの見方
NOAAの太陽風データはこちらから見られます。
実際の画面のスクリーンショットを見ながら説明します。

NOAAの「Real Time Solar Wind」のページにいくと、横に長い5つのグラフが縦に並んでいます。上から
- 「Bt Bz GSM(nT):磁場強度(Bt:total、Bz:Z軸=地球の南北方向)」
- 「Phi GSM(deg):太陽風磁場の方位角(XY平面)」
- 「Density(1/cm3):プラズマの密度」
- 「Speed(km/s):太陽風速度」
- 「Temperature(K°):プラズマ温度」
を表しています。密度も温度も高い方がオーロラは発生しやすいようですが、ここで特に注目するのは、ここまでで説明した1. 磁場強度と4. 太陽風速度です。
見たいデータはカーソルを見たい時間に合わせることで、確認することができます。

例えば、2025年8月11日のGT01:49にカーソルを合わせてみました。
この時間の磁場強度はBt「6」。また、Bz「+2」で北向きですが、この日は南向き(赤いプロットがマイナス)と北向き(赤いプロットがプラス)を繰り返しています。このことから、磁場強度はかなり期待できます。太陽風速度も582km/sなので、こちらもオーロラが十分に期待できるレベルです。
この太陽風の速さであれば、40〜50分の間に地球に到達するので、もしこれが暗い時間であれば、オーロラが見られる可能性は高いです。
問題は、この時期のフィンランドの日照時間が長いことです。2024年には、ヘルシンキで8月13日にオーロラが見れたそうですが、8月に見られることは本当に稀ですし、ヘルシンキで見られることもとても珍しいです。
今回は、あくまでも例として見方をお伝えするためのものですので、同様のことをオーロラがよく見られる9月〜3月頃に試してみてください。Kp値と併用して、太陽風の強度や方角、速度を確認して、オーロラを見る確率を少しでも上げてもらえれば嬉しいです。
Space Weather Live
もう一つご紹介させてください。
というのも、NOAAのサイトより、こちらのサイトの方がわかりやすいからです。Space Weather Liveというサイトです。Kp値と同じページで太陽風の情報が確認できます。

このサイトのいいところは、地球に今到達している太陽風の部分に直線(「Earth」と書いてある)を引いて示しているので、これから地球に到達する太陽風の速度が見やすいことです。
磁場の向きに関しても、同じページに掲載されています。

この日は、磁場の向きが南向きと北向きを行き来しているので、季節が良ければオーロラが出ていた可能性が高いです。
実際にKp値は低いのに太陽風が強くてオーロラを見れた例
実は、お恥ずかしながら、オウル大学に留学していた頃は、太陽風の値を見ていませんでした。太陽風の数値は、日本に帰ってきてから眺めるようになりました。そのため、現地にいた時の話はできないのですが、それでもOuluのオーロラ出現情報は今でも手に入れられるので、数値とオーロラ出現を突き合わせることはできます。
今回はそのうちの一つの例をご紹介します。

最近でいえば、2025年4月12日22:30〜23:00頃にOuluでオーロラが見られています。4月16日(Kp8-)や4月20日(Kp5+)にもオーロラが見られているのですが、この日はKp値も高いので、ここでは無視します。
4月12日22:30〜23:00頃のKp値は「4-」でした。Ouluでは、Kp「4-〜4+」程度だと、全く見れないというわけでもないのですが、見れないことの方が多いので、私ならオーロラを見るのを諦めていたレベルです。
このときの太陽風の情報を見ると、下の表のようになっていました。
| 太陽風データ | 数値 | 評価 |
| 速度 | 500km/s弱 | まあまあ |
| 強度 | 6〜9nT | 期待できる |
| 磁場の向き | マイナスの時間が長い (ほとんど南向き) | 期待できる |



つまり、ベストコンディションではないですが、期待できるレベルです。Kp値の割には、太陽風の磁場がかなり強いようです。磁場が強いと地球にプラズマが降り注ぎやすくなるので、オーロラが発生したのではないかと思います。
とはいえ、太陽風の観測値が良くてもオーロラが見られるとは限りません!
ここまで見てきた通り、オーロラの発生には以下の3つの要素が複雑に絡み合っています。数値の高さは、少しでも確率を上げてくれるものであって、確実なオーロラ発生を約束してくれるものではありません。
- 太陽活動が活発であること
- 太陽風のエネルギーが大きいこと
- 太陽風の磁場の向きが南向きであること
私がざっと見た限りだと、2025年はオーロラが頻繁に確認されているようですが、オーロラというのは、そもそも気まぐれな存在なので、今年の調子がいいからと言って、来年も調子がいいとは限りませんし、運の要素も大きく関わってきます。
オーロラの専門家ですら、「世間的にはオーロラの専門家なのだけれど、オーロラの専門家を名乗るのは気が引ける」と考えるほど、オーロラのことはわからないことだらけなようなので、今のところ、この世界に絶対はありません。
でも、わからないからこそ、オーロラの神秘性が感じられるのかもしれませんね。
まとめ
いかがでしたか??
もう一度、この記事で書いた内容をサラッとおさらいします。
- 太陽風速度:「500」以上だと期待できる!
- 磁場強度Bt:「5」以上で期待できる!
- 磁場の向き:「南向き」だと期待できる!
太陽風の速度、磁場強度、磁場の向きは、長期予報ではカバーしきれない短期の予報にはうってつけです。Kp値と併用することで、オーロラが見れる可能性を少しでもあげてほしいです。
とにかく、この記事で言いたいことは、Kp値だけを見て、オーロラを諦めるのは勿体無いということです。
オーロラ観察、楽しんでください!
もっと詳しく知りたい方へ:オーロラ関連リンク集
参考文献
- 『太陽のきほん』上出洋介 2018 誠文堂新光社
- 『一生に一度は見たい絶景の楽しみ方 オーロラ・ウォッチングガイド』赤祖父俊一 監修 2018 誠文堂新光社
- 『オーロラの科学 人はなぜオーロラにひかれるのか』上出洋介 2010 誠文堂新光社
- 『極地研ライブラリー オーロラの謎 南極・北極の比較観測』佐藤夏雄・門倉昭 2015 成山堂書店
- 『オーロラ・ウォッチング オーロラに会いにいこう』上出洋介 監修 2005 誠文堂新光社
- 『磁気嵐の基礎知識』気象庁地磁気観測所HP(https://www.kakioka-jma.go.jp/knowledge/mstorm_bg.html)2025.8.11アクセス
- 『現在の宇宙天気予報 と現況』(https://www2.nict.go.jp/spe/swx/swcenter/current.html)2025.8.11アクセス
- 『Real Time Solar Wind』NOAA Space Wether Prediction Center (https://www.swpc.noaa.gov/products/real-time-solar-wind)2025.8.11アクセス
- SpaceWeatherLive(https://www.spaceweatherlive.com)2025.8.11アクセス
- 『地球磁気圏への侵入』auroranavi.com(https://auroranavi.com/aurora/magnetosphere.html)2025.8.11アクセス
脚注
- Kp値が書籍で扱われることが少ない不思議
Kp値は不思議なことに、オーロラについて書かれた本ではあまり直接的に扱われていません。Kp値が学問的に弱いのか、オーロラを体系的に説明するには必要ないと思われたのか、初心者には難しいと考えられたのか、理由はわかりません。今のところ、オーロラに関する本を4冊読みましたが、Kp値について詳しく説明している本はありませんでした。 ↩︎ - 太陽の磁場
見かけ上、気まぐれに見えますが、太陽の磁場の変化は正確には周期性があります。 ↩︎ - 太陽風の磁場
太陽風の磁場も太陽の磁場に加えて、パーカー螺旋と呼ばれる太陽の自転を原因とした磁場の変化が起きることで地球に達した時の磁場が変化します。 ↩︎ - 磁気再結合(magnetic reconnection)
太陽風の磁場が逆方向を向いている場合、お互いの磁場が打ち消されて、太陽風と地球の磁場が結合します。これにより、磁気再結合と呼ばれる磁場の繋ぎ替えが起こります。このとき、太陽風のプラズマ粒子が地球の磁場に取り込まれて、プラズマシートにプラズマ粒子が輸送・蓄積される状態になります。プラズマシートにプラズマ粒子が溜まれば溜まるほど、プラズマシートの圧力が増すので、地球にプラズマ粒子が降り注ぎやすくなり、その結果オーロラが見やすくなります。 ↩︎ - 太陽風磁気「Bt」ってなに?
『現在の宇宙天気予報と現況』というサイトで、「B」は太陽風の磁場強度のことで、「Bz」の場合は地球の南北方向(磁場のZ軸に相当する)と書かれています。Bx、By、Bzに対して、「Bt」はtotalの「t」です。合成ベクトルのことだと思われます。 ↩︎





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