こんにちは。ズッキーです。
フィンランドのオウルからふらっと始まった自転車旅、5日目の後編です。
1日目から続いた、お尻との戦いが終わり、融和の時代がきました。
カビの生えたパン
『ONE PIECE』を読んだ(見た)ことはあるでしょうか?
『ONE PIECE』にはサンジという足癖の悪いオジさんが出てきます。そのオジさんの少年時代の話で、嵐で船が遭難して食べ物がなくなり、カビの生えたパンを泣く泣く食べたという話があります。私は、その話を読んで「ん??」と引っかかりました。「カビの生えたパンくらい日常的に見るだろ??」と思ったからです。
「ん??」と私の言葉に引っかかった方。いると思いますが、ここで言っているのは、現代の話ではありません。海賊時代の話です。
というのも…。
航海というものは当然海の上を進むわけです。木造の船というのは、今のように空調なんてなく、パッキパキに乾燥しているわけもないので、かなり湿気の多い場所でしょう。そこに食料を積んでいるわけですから、当然カビだって生えるでしょう。ならば、船に長期間乗っていたら、カビの生えたパンくらいしょっちゅう食べていただろうと思うわけです。
という私の疑念は何から発生したかというと…。
旅の話に戻るわけです。
リュックに入れていた、私のパンにカビが生えていました。

おそらく、パンが元々持つ水分による湿気と、私の体温と太陽の熱が合わさり、パンの袋の中がカビにとって、とても居心地の良い環境になったためでしょう。
でも、食料はこれしかありません。仕方ありません。日本では昔から、鏡餅を飾ったあと、カビの部分だけ取り除いで食べていました。これに倣って、私もカビを取り除いて食べることにしました。幸い、カビていたパンはそんなに多くありませんでした。
このカビたパンが誤って口に入ると、明らかに舌に刺激があったので、毒性があるのでしょう。穀物系に発生するカビ毒は、アフラトキシンなど、熱に強いものや、体内に蓄積するものもあるので、避けるのが無難です。カビの菌糸は見た目では見えないところまで伸びているので、見た目だけで取り除いた気になりやすいので、注意してください。
以上、「カビパン」講座でした。
雨が降っても走り続けるしかない
毎日自転車で走っていると、当然、雨が降ります。
当然、濡れる以外の術はありません。私は前に進まない限り、家へ帰れないのです。

上下を雨合羽で身を固め、靴用雨具を取り付けます。リュックにももちろん雨具を着せます。そして、雨の中をシャパシャバ水を飛ばしながら、進みます。夏も涼しいフィンランドで、雨が降ると、寒いこともありますが、漕いでいる間は常に体が熱を発するので平気です。
次第に雨具に浸透して、服も濡れてきます。
「寒いわけではないけど、こんなにビショビショに濡れて乾くかな?」
と思っていたら、そこは白夜が仕事をします。一日中雨が降っていることはほとんどなく、夜になれば、太陽が顔を出して、日光と体の熱の相乗効果で、自転車を漕いでいるうちに乾いていきます。

むしろ揮発熱のおかげで、ちょうどいい温度になったくらいです。
それよりも、自転車の方が錆びないか心配でした。私の自転車のフレームはアルミなので大丈夫ですが、チェーンなどが錆びないか不安になります。きちんと油を注しながら旅するのが良いです。
また、フレームがクロモリ(クロムモリブデンという鉄製の素材)を使っている方は、ちゃんと拭いて乾かさないと錆びてしまうというので、気をつけてください。
結論として、意外と雨で濡れながら進んでもなんとかなるというのが、この経験からわかりました。雨に濡れるとシャワーみたいで気持ち良いですしね。
お尻とトイレが心地よい話

この頃になると、初日は痛かったお尻が、どこか心地よくなっていました。サドルがお尻に馴染んだのか、お尻がサドルが馴染んだのかは私にはわかりません。ただ、なぜかこの話を友人にすると、みんなに「やばっ!!変態やん!」と言われます。痛いより気持ちいい方がよっぽど良いことなのに、不思議です。これもまた、自転車旅の深みなのかもしれません。
もし自転車旅を考えている方がいらっしゃれば、もう一度よく考えてください。友達に「やばい!」と引かれるくらい、お尻とサドルがマッチするのが、自転車旅行です。よく覚えておいてください。
トイレがとても暖かいと感じ始めたのもこの頃で、じわりじわりと北方の地に入り込んでいっているのが感じられました。
「ずっとトイレに籠っていたい」
そんな気持ちになるほど、外は寒く、トイレの中は快適でした。なぜか、字面はやばいですが、気温の問題はそれだけ切実だったのです。

途中、イナリInariという場所でSiidaという北欧の先住民サーミの博物館を通りました。閉まる1時間前くらいだったので、見たかったけど中は見ませんでした。めちゃくちゃ興味はあったんだけどなあ。

そこも快適な場所だったので、少しだけ休みました。
壁があって、屋根があるって、それだけで幸せです。青空が見える自然トイレも、星空が見える屋内トイレも使ったことがありますが、晴れの日は星空が見えてよかったりもしますが、やはり雨の日は最悪です。雨合羽を着ないと、トイレにも行けないことを考えてみてください。
普通の生活がどれほど素晴らしいことか!!
この旅では、「美しい景色」と「屋根のあるトイレ」が一番の癒しでした。
旅の目的:ヘラジカとの遭遇

私はこの自転車旅に出るにあたって、密かな目的を持っていました。それは、ヘラジカを見ることです。車で走っていると、トナカイに遭遇することはそれなりにありましたが、ヘラジカに出会うことはありませんでしたし、できれば出会いたくありませんでした。
というのも、ヘラジカが道路に出てきて、衝突事故になると、運転手が死ぬ可能性がかなり高くなるからです。フィンランド人から聞いた話によると、ヘラジカは一般的な鹿より一回りも二回りも大きいので、車がぶつかると、ボンネットの上に倒れ込んで角がちょうど運転手に刺さるのだそうです。
(なんて危ないんだ!(๑º ㅿº))

昔はOuluの近くでもよく目撃されたそうですが、今はハンティングや事故などで個体数が減少しているため、中々出会うことはなくなったそうです。
なので、北極圏に至った今、ヘラジカに出会うのは、私の大きな目的でした。とは言っても、野生の生き物なので、私が勝手に目的にしたところで、あちらから出向いてくれるわけではありません。
私は日々、ヘラジカとの遭遇を祈りながら、進むことしかできませんでした。

そして、この日、ついにその機会が来ました。
時刻は、夜の22時ごろ。道路を通る車もほとんどなくなり、人の気配を全く感じなくなった世界をポツンとただ孤独に自転車を漕いでいました。自然の音以外全くしないところに、ずっといるという経験がこの旅に出るまでほとんどなかったので、まるで、「世界に自分ひとりしかいないんじゃないか」という気持ちになってきました。なんだか寂しくて死にそうでした。
本格的にラップランドに入って、空気も冷たくなってきました。寂しさと寒さはなんだかよく似ています。気持ちと肉体の両方を冷やされるような感覚です。それでも、景色はとても綺麗なのが、とても残酷な感じがしました。

こんな風に、我ながら詩的なことばかり考えていました。寂しすぎると、やることがなくなって、人はポエマーになるみたいです。
そんなポエマーな私は、ポエムな気持ちに浸りながらも、この日の宿泊地になりそうな場所を探していました。1人で前に進むには、あまりに疲れていたのです。
そんな折り。ガサガサっ!!とドデカい音が右手の薮から聞こえ、大きな、大きなお尻が見えました。
「えっ!?」
軽く私の身の丈くらいはありそうな、お尻がガッサガッサと音を立てて、薮の奥に逃げていくのが見えました。驚きが先に来ましたが、その正体は明らかです。もしかして、もしかしなくても、ヘラジカでした。
「で、でかっ!」
想像はしていましたし、想像の通りの大きさでしたが、それでも大きく感じました。そして、興奮を感じました。写真を撮る間もありませんでしたが、あれは間違いなくヘラジカです。
なんだか、寂しさで枯れていた心に、水が湧き出るように、やる気がボコボコ吹き出してくるのを感じました。やる気がボッコボコでした。漲る力で、自転車を爽快に漕ぎ始めます。
いや、もう22時を過ぎているんですけどね!
さらに、漲るやる気が漲る出来事が起こります。
ガサガサ! ベキっ、バキっ!
再び他のヘラジカくんに遭遇したのです。しかしまあ、今回もほぼお尻だけの対面となりました。ヘラジカのお尻は、木の枝をへし折りながら、遠ざかって行き、薮の中へ消えました。とはいえ、人生2度目のお尻は中々嬉しいものです。今回は、カメラを取り出すところまでは行きましたが、起動している間に逃げてしまったので、それだけが心残りです。
『2度あることは3度ある』
そんなことわざがありますが、この日はことわざの通り、それだけで終わりませんでした。
さらに自転車を漕いだところで、三度ヘラジカに遭遇したのです。しかも、今回は、全体をはっきりと見ることができました。それは、道路からは少し離れた草原にいました。私の存在にはっきりと気がついて、こちらを見ていましたが、離れているので、逃げることはありませんでした。

3回目はきっちりと写真を撮ることができました。本当は一眼レフで撮れれば良かったのですが、普通のデジカメで撮ってしまったので、画質は荒めです。
でも、最高の瞬間でした。めちゃくちゃ興奮して、疲れも寂しさも吹っ飛びました。この日は123.45kmを目指して進んでいたはずなのですが、いつの間にか、それを見過ごしていました。それくらい、この日はヘラジカをみた興奮で頭がいっぱいになっていました。
いや〜、あれは嬉しかったなあ。
お尻の話だけで終わらず、本当に良かったです。
本日の走行距離
5日目の走行距離は、133.29kmでした。
まとめ
自転車旅5日目後半でした!
- カビの生えたパンは『ONE PIECE』の世界だけではありません! あなたのパンもカビます。
- 自転車旅で雨に濡れても、白夜と体温で意外と乾きます。
- お尻とサドルは一心同体です。 最初は痛くても、いつか心地よくなる日が来ます。
- 北極圏のトイレは至福の空間でした
- 念願のヘラジカに三度も遭遇しました!
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!「面白かった!」「いいと思う」「死ぬほど参考になった!」と思った方はぜひ、SNS等でシェアしていただけると嬉しいです。






コメント