オーロラが肉眼で白いモヤに見える理由|実際の色と人間の目の関係を科学的に解説

オーロラはただの白いモヤ?意外とショボいと感じた理由 オーロラ

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 オーロラを実際に見ると、「あれ、思っていたのと違う!?」と感じた方も多いはず。

 カメラで撮ると、鮮やかな緑色をしているのに、実際に目で見る色は白くてボヤッとして雲みたいな色をしていることがあって、「え、意外とショボい」と思ったり、がっかりした方もいるのではないでしょうか?

 実はこれ、写真のマジックなどではなくて、人の目の方の問題なんです。

 

はじめに

 オーロラに関する本を読んでいると、見えるオーロラの色には個人差があることが書かれています。

なお、オーロラの写真で見られるようなとてもカラフルな色は、肉眼で同じように見えるとは限りません。個人差も大きく、とくに赤色のオーロラは、肉眼では認識しにくいとされています。

『一生に一度は見たい絶景の楽しみ方 オーロラ・ウォッチングガイド』赤祖父俊一 監修 2018 誠文堂新光社

 この文章を読んだとき、ビビビビッときました!

 オーロラを初めて見たときの記憶が蘇ってきたのです。

 私が初めてオーロラを見たときの話。

 私の横でオーロラを見ていたイタリア人の友人は、「ほら、ズッキー見て。赤っぽい色が出ている」とか、「あそこは緑で、あそこはピンクだ!」とか教えてくれたのですが、私はたぶん浮かない顔をしていたのだと思います。

 私には、オーロラが白っぽい色にしか見えませんでした。

 私の目が悪いせいか、それとも目がおかしいのか、はたまた頭がおかしいのか(←友達に頭がおかしいとよく言われる笑)。

 「私の目では、色がうまく認識できないのかな??」

などと考えたりもしました。

 でも、他の留学生と話すと、「白いモヤみたいに見える」と言っている人もいたので、

「どうやら、オーロラの色がうまく見えないのは、一般的なことらしい!」

ということもわかりました。

 こうしてオーロラの見え方に個人差があることが、専門書にもしっかり書かれていることを知り、「自分だけではない」ことがわかって、なんとなく嬉しく感じました。

 

 でも、なぜオーロラの色が見える人と見えない人がいるのでしょうか?

 

人間の目の仕組み

 ぼんやりとしたオーロラは雲のように見えます。

 そのことが書かれている文章があるので、ご紹介します。

ぼんやりオーロラは、文字どおり薄くぼんやりしていて、慣れないうちは、現地では雲と間違えるかもしれません。薄暗くて、色も感じられません。人間の視神経は、ある程度の明るさのものでなければ、色を感じないようです。そのため、ぼんやりオーロラは、ほとんどの人には単に白っぽいオーロラに見えることでしょう。写真に撮ると、露出時間にもよりますが、薄いグリーンに写っていることが多いようです。

『オーロラの科学 人はなぜオーロラにひかれるのか』上出洋介 2010 誠文堂新光社

 雲のように見える理由もここに書いてあります。

 どうやら、視神経の問題であるようです。ということは、人間の目の仕組みを調べれば、オーロラの色が見えない理由がわかるということです。

 実際、その答えは、生物の教科書に載っていました。

 オーロラの色が写真のように見えない理由は、視神経の仕組みにあります。目の中には、光を受容する視細胞があります。視細胞には、錐体細胞すいたいさいぼう桿体細胞かんたいさいぼうという2種類があります。

  • 錐体細胞すいたいさいぼう‥色を識別する細胞。強い光の下で主にはたらく。
  • 桿体細胞かんたいさいぼう‥光の強弱(明暗)を識別する細胞。弱い光の下で主にはたらく。

 つまり、強い光の元では、錐体細胞が最もよく働き、色を認識できるのですが、逆に、弱い光の元では錐体細胞の活動が極めて低くなるため、色を識別しにくくなります。さらに、この錐体細胞の色の識別能力には個人差があるようです。

 そのため、オーロラの光が弱いと、白いもやのように見えたり、人によって、色が見えたり見えなかったりということが起こります。

 

 理屈としては、そういうことなのですが、イメージがつかない方も多いかと思います。実は、この現象は、皆さんも日常生活で経験していることです。

暗いと、モノが白黒に見える現象

 イメージして欲しいのが、寝る前の暗い部屋です。あるいは、夜に突然目が覚めて、トイレに行きたくなったりしたときを思い浮かべてください。

 そのときに見える部屋の景色は白黒のモノトーンですよね。昼間と同じように、色が綺麗に見えません。

 それは、光が足りなくて、色を識別するのに使われる錐体細胞がはたらかないからです。

 

オーロラが白いモヤに見える理由

 これと同じことが、オーロラでも起きています。オーロラは100km以上も上空で起きている発光現象です。地上に着くころには、光が減衰してしまいます。その結果、暗闇でもはたらく桿体細胞によって、明暗の区別はつくのですが、オーロラの光が弱すぎると、錐体細胞が十分にはたらかないので、色の区別がつかないのです。

ポイント
  1. 目の構造
    ‥人間の網膜には、色を識別する錐体細胞と、光の明暗を識別する桿体細胞という2種類の視細胞があります。錐体細胞は明るい場所で働き、色を認識しますが、桿体細胞は暗い場所でもわずかな光を感知できますが、色の識別はできません。
  2. 光の弱さ
    ‥遠くにある光は、地球に届くまでに大きく減衰し、非常に弱くなります。オーロラの光自体に色はありますが、オーロラの減衰した弱い光は、色の識別を担う錐体細胞を十分に刺激することができず、暗闇でも働く桿体細胞のみが反応した結果、白いモヤのように見えます。

 

 それでは、写真のオーロラの色ほどまでとはいかなくても、色のついたオーロラを見るためにはどうしたらいいでしょうか。

色のついたオーロラを肉眼で見るには?

 色のついたオーロラを見るには、次の3つの方法が考えられます。

  • 明るいオーロラを見る(ただの運)
  • 十分に暗順応をする(少しでも可能性を上げる)
  • オーロラに色があると思い込む

 

オーロラが明るければ色が識別できる!?

 ここまで読めばお気付きだと思いますが、オーロラの光が弱すぎるのが、全ての元凶です。つまり、全部オーロラが悪いんです。

 でも、オーロラだって、常に暗いわけではありません。ときには明るく活発なときもあります。滅多に見られないそうですが、満月くらい明るいことだってあるんです。明るければ明るいほど色のあるオーロラが見られる可能性が上がります。

明るめのオーロラ(満月ほどは明るくない)

 でも、それほど明るいオーロラが見られるかどうかは運です。オーロラの研究者ですら滅多に見られないそうです。

 ただ、ここでいう運は確率です。

 確率は上げられます。フィンランドで見たい場合はとにかく北へ行ってください。そして、ダメだったら、何度も試すしかありません。あなたのチャレンジが、色のあるオーロラを見られるチャンスに繋がります。

↓オーロラの色や形に関する記事はこちら!

 

 でも、それ以外でもできることもあります。

暗順応をしっかりしてオーロラを見る

 人間が暗いところでものが見えるようになることを暗順応と言います。目が暗順応をして、暗闇の中での視覚が最大限に発揮できるようになるまでは30分くらいかかります。

 この状態でオーロラを見た方がしっかりオーロラが見える可能性が高まります。オーロラ自体が光を発しているので、暗順応によって、かすかな光にも敏感になり、色の認識がわずかでも可能になる態勢にしておくことが重要です。

 街灯の光や、ケータイやスマホの明かりでも暗順応は解けてしまうので、オーロラの色を本気で見るときはスマホの使用も避けた方がいいかもしれません。

 

オーロラに色があると信じる

 人間の脳というものは、めちゃくちゃ優れているので、脳内で色を補正しています。暗いところでは、特にその補正が強く働きます。

 昔、あるドレス(“the dress”と呼ばれる)が青と黒の色の組み合わせに見えるか、白と金の色の組み合わせに見えるかということが世界中で議論になったことがありました。

 人によって見える色というのは、それくらい異なります。

 つまり、色は人の認識の影響を大きく受けるということです。もしかしたら、白いと思い込んでしまっているだけで、よく見たら色が見えるかもしれませんよ!

 

まとめ

 いかがでしたか?

今回のポイント
  • オーロラは白いモヤのように見えることがある
  • これはオーロラの光が弱くて、色を識別する錐体細胞が十分に機能しないため
  • オーロラの色を見たいときは、30分くらい暗闇に慣らすのがオススメ!
  • オーロラに色があると信じるのも大事!
  • それでも見れないときは、もう一度オーロラ・ハンティングしましょう!

 次にオーロラを見に行くときは、明るいオーロラが出てくることを祈りましょう。色が見えるようになるまで、ぜひ、何度でも試してみてください。

 お金がない〜〜!! 次、いつ行けるんだ!?(ó﹏ò。)

 

もっと詳しく知りたい方へ:オーロラ関連リンク集

  

 

 

参考文献

  • 『一生に一度は見たい絶景の楽しみ方 オーロラ・ウォッチングガイド』赤祖父俊一 監修 2018 誠文堂新光社
  • 『オーロラの科学 人はなぜオーロラにひかれるのか』上出洋介 2010 誠文堂新光社
  • 『オーロラ・ウォッチング オーロラに会いにいこう』上出洋介 監修 2005 誠文堂新光社
  • 『大森徹の最強講義117講 生物I・II』大森徹 2009 文英堂
  • 『「色のふしぎ」と不思議な社会 2020年代の「色覚」原論』川端裕人 2020 筑摩書房

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