ルクセンブルクは何語? 4か国語を巧みに使い分けるルクセンブルクの人々

ルクセンブルクって何語? ベネルクス

※この記事はAmazonアフィリエイト広告を掲載しています。

 

 こんにちは。ズッキーです。

 先日、ルクセンブルクに行きました。

 私はポンコツので、ルクセンブルクに行く日になってやっと、「あれ、ルクセンブルクって英語通じるんだっけ??」という重要な問題に気がつきました。通じなくてもまあ、英語で押し通るしかないわけですが、ルクセンブルクの人々が何語を喋るのかということに、本当に直前になるまで思い至らなかったのが、ポンコツの私のポンコツたる所以です。しかし、結局それを調べるのも忘れて、ルクセンブルクに突入しました。

 ちょっと相手の文化に対する敬意が足りていなかったので、反省の気持ちも込めて、そして私よりあとにルクセンブルクに入る人のために、この記事を書きます。

[PR]この記事を書くにあたって、こんな本を参考にしました!!

 

ルクセンブルクってどこ??

 ルクセンブルクは、ヨーロッパにある小国で、フランス、ドイツ、ベルギーの3国に挟まれた、内陸の国です。ベルギー、オランダ、ルクセンブルクをまとめた、ベネルクス三国の一つとしても知られています。領土の面積は約2586km2で、佐賀県や神奈川県より少し大きい程度の小さな国です。緯度は北海道より北方で、樺太の中央部くらいの高さです。経度は東経6度あたりなので、ロンドンより少し東側にあります。

 ルクセンブルクは、パリとベルリンを結ぶライン上に存在するので、ヨーロッパの国々からのアクセスも良好です。その中心都市ルクセンブルク市は、ドイツのトリーアまで在来線で約1時間強、フランスのパリまでTGV(高速鉄道)で約2〜3時間(直通で2時間強)、ベルギーのブリュッセルまでIC(特急列車)で3時間弱で行けちゃいます。

 

街に飛び交う不思議な言語

 私たちは、ブリュッセルから電車で、ルクセンブルクの首都ルクセンブルク市に入りました。日本では、ちょっとマイナーな国だということもあって、事前情報は少なめです。

 私はいつも通り、街中の声(駅やトラムの中の会話など)に耳を澄ませます。

 聞こえてくる言語は、フランス語、英語、何やらわからない言語(たぶんルクセンブルク語だった?)で、入り乱れています。中央駅がGare centraleと書かれているなど、フランス語っぽい言語表記が目立ちます。トラムやバスもフランス語と英語表記に見えます。そのため、私は最初フランス語圏なのだと勘違いしました。

 挨拶も聞いていると、会ったときは、”Bonjourボンジュー!”「こんにちは」、別れるときは”Äddiアッディ!”「さよなら」と言っていて、どうやらフランス語っぽいと感じました。

 この”Äddiアッディ!”というのも最初は、フランス語の”Adieuアドュー!”かと思っていました(ちなみに、フランス語の”Adieu!”は「長期的な別れ」あるいは「永遠の別れ」の際に使われるようなので、こうした日常の会話には出てこないそうです。フランス語で「さよなら」は普通”Au revoirオ・ルヴォワール“といいます)。実はルクセンブルク語だったわけですが……。そんなことは当初は知らず、「何となく発音が違う気がする」くらいにしか思っていませんでした。

 ホテルに着くと、フランス語で話しかけられましたが、フランス語がわからないとわかると、すぐに英語に切り替えてきます。街の中のお店にいくと、時々英語が苦手な人もいるようで、フランス語で話しかけてきてくれましたが、英語では説明がうまくできずもどかしそうにしていることもありました。ホテルに着いたあたりで、「ルクセンブルク=フランス語」だと納得しかけたのですが、どこかで見たドイツ語っぽい表記も気になります。この結論を出すには、私の中でどこかが引っかかっていました。

「ルクセンブルクはフランス語っぽいけど、何語なんだろう??」

と、妻と話していたら、妻が調べてくれました。

 すると、ルクセンブルクには、ルクセンブルク語があるということがわかりました。

「え、どこに??」

とそのときは思ったのですが、ルクセンブルク語があるという前提で街の中を歩いていると、ちらほらそれらしきものが出てきます。わかりやすいものでいうと、ルクセンブルク(Luxembourg)を”Lëtzebuerg”と書いてあります。フランス語ともドイツ語とも少し違うような綴りです。おそらく、これがルクセンブルク語なのでしょう。

 しかし、疑問も生まれます。私の感覚では、この”Lëtzebuerg”はドイツ語と同じ、ゲルマン系統の綴りです。一方、街で聞こえてくる言語はフランス語(ラテン語系統)らしき言葉が多いのです。とても不思議でした。

 というか、生のルクセンブルク語はどこで聞けるのでしょう??

 

ルクセンブルクで使用される4つの言語

 まずは、基本的情報を整理しましょう。

 『ルクセンブルクを知るための50章』(田原憲和・木戸紗織 編著)によると、ルクセンブルクでは、ルクセンブルク語、フランス語、ドイツ語の3つの言語が公用語とされており、これに加えて英語も共通言語の一つとして使われています。そして、ルクセンブルク人はこの3つの公用語+英語を状況に応じて使い分けているようなのです。

 そもそも法律からして、少し変わっています。「言語法」の条文を引用します。

第1条 国語

 ルクセンブルク国民の国語はルクセンブルク語である。

第2条

 法令および施行規則はフランス語で起草される。(以下省略)

『ルクセンブルクを知るための50章』(田原憲和・木戸紗織 編著)より引用

「うぉーい!! まじか!」という感じです。つまり、国語はルクセンブルク語だけど、法律はフランス語で書くよ、と説明されているわけです。日本で例えると、「国語は日本語だけど、法律は漢文で作られます!」と言っているようなもので、現代日本人の感覚だと考えられません。それでいて、地方行政の文書や警察署内の文書はドイツ語で書かれるそうです。つまり、国家レベルの文書はフランス語で書かれ、地方自治体レベルの文書はドイツ語で書かれていることになります。

 それがよく現れているのが、新聞です。ルクセンブルク最大の新聞である『ルクセンブルガー・ヴォルト』紙では、ドイツ語で書かれた記事が大半を占め、ついで、フランス語、そしてルクセンブルク語の記事は残り数%しかありません。私ももらった無料新聞の『エッセンシャル』紙は、すべてフランス語で書かれています。

 ここまで基礎的な情報をまとめましたが、「ルクセンブルク語はいつ、どこで使うの?」という疑問の念は解消するどころか、ますます募るばかりです。

 

ルクセンブルク語ってどんな場面で使われているの??

 結論から言えば、ここまでの話でルクセンブルク語の影が薄かった原因は、主に2つあります。

  1. ルクセンブルク語が話し言葉とされてきたこと
  2. ルクセンブルク市に外国人労働者が多いこと

 それぞれ見ていきましょう。

 まずは1つ目の原因ですが、ルクセンブルク語は元々話し言葉として使われてきたことです。そして、話し言葉とされてきたのは、ルクセンブルク語が元々はドイツ語の一方言に過ぎなかったからです。書き言葉としては、ドイツ語を使ってきました(これについては、関西弁や名古屋弁を書き言葉としてはあまり使わないのと、同じような感覚ではないかと想像しています)。

 ルクセンブルクは、神聖ローマ帝国皇帝も輩出した由緒正しい国ではありますが、他のベネルクス三国同様に、その立地ゆえに、大国に揉まれてきました。フランス革命でフランスに占領され、第一次、第二次世界大戦ではドイツに占領されました。詳しい歴史の流れは省きますが、この大国間で常に翻弄された経験が少しずつ、ルクセンブルク人の国民意識を高めることになりました。最終的に、1984年に言語法が成立し、ルクセンブルク語がドイツ語から独立しました。

 このような歴史から、ルクセンブルク語が書き言葉として使われ始めたのは、歴史的にはかなり最近の話です。また、各国に占領され、言語を強要された歴史から、ドイツ語、フランス語も公用語として使われています。

 2つ目の原因について、私が訪ねた首都ルクセンブルク市で、ルクセンブルク語があまり聞こえないように思えたのは、ルクセンブルクが移民の国でもあるからです。

 ルクセンブルクは非居住者の法人や金融取引に対して税的な優遇措置をとったことで、国際的な金融センターとして発展しました。しかし、経済成長に人口増加が追いつかず、労働者不足となったルクセンブルクでは、積極的に外国人を受け入れました。特に、首都ルクセンブルク市では、フランス語圏からの越境労働者も多く、そのためにフランス語を使用する機会が多いそうです。ルクセンブルク語の語彙には、フランス語からの借用語も多いようですが、その中でも特にルクセンブルク市の語彙は、フランス語借用が多いそうです。

ルクセンブルク語のフランス語借用例

例:「バス運転手」

  • ドイツ語:Busfahrerブスファーラー
  • フランス語:chauffeurショフェール deドゥ busブス

  → ルクセンブルク語:Buschauffeurブスショファー

例:「飛行機」

  • ルクセンブルク語 “Fligerフリージャー
  • ルクセンブルク市周辺 “Avionアヴィヨン“ ←フランス語借用

 つまり、私がルクセンブルク語があまり聞こえないと感じたのは、私が行った場所がルクセンブルク市であったことが大きく影響しているのではないかと思います。

 このように、ルクセンブルク語は、ドイツ語の方言から生まれた言語でありながら、フランス語の影響も受けた言語です。でも、ここまで複数の言語を習得するって、とてつもなく大変なことですよね。実際、ルクセンブルクの教育は、言語教育にかなり重点を置いているようです。

 

3つの公用語をマスターするためのルクセンブルク教育

 ルクセンブルクの言語学習の大変さは、小学生の時間割から見てとることができます。

小学校における言語科目の週あたりの時間数(全学年週28時間授業)

1年2年
前半
2年
後半
3年4年5年6年
ルクセンブルク語1111111
フランス語37777
ドイツ語8985555

(日本の小学生の学年に当てはめて表示したものです)

『ルクセンブルクを知るための50章』(田原憲和・木戸紗織 編著)より引用

 小学校時点で、ドイツ語とフランス語をみっちりと詰め込まれていますね。ドイツ語はルクセンブルク語と親戚関係にあるから、国語の一部と受け取るとしても、フランス語は小学3年生から週3時間、4年生からは7時間も授業があります。比較のために、日本の教育を考えると、おそらく日本の小学校教育の授業数は、週24時間〜30時間くらいで、そのうち英語は週1〜2時間くらいだと思うので、それと比べると凄まじい語学学習量です。

 大学を目指す場合、中学校・高校(ルクセンブルクでは、一貫で7年制)では、さらに16〜20時間の言語カリキュラムがあるというので、本当に凄まじいとしか言いようがありません。

 しかし、逆に言えば、語学の学習がそれだけ時間がかかるものだということもわかります。こうした基礎教育の積み重ねが、ルクセンブルクを多言語国家として成り立たせているのでしょう。それが国際的な金融大国として成り立つ原動力になっているのかもしれません。

 私も英語でぶうぶう言っている場合じゃありませんね。ぶうぶう。

 

まとめ

 それではまとめです。

まとめ
  • ルクセンブルクの言語は、ルクセンブルク語、フランス語、ドイツ語の3つが公用語で、さらに英語も通じます!
  • 法律はフランス語、地方文書はドイツ語で書かれるなど、公用語の使い分けはとても複雑
  • ルクセンブルク語に旅先で出会う機会が少ないのは、主に元々話し言葉だったことと、首都ルクセンブルク市に外国人労働者が多いことが原因。
  • ルクセンブルクの教育では、幼い頃から複数の言語学習に重点が置かれており、その語学力は国際的な金融国家としての発展を支えている!?

 ここまでお読みいただき、ありがとうございます! ルクセンブルクの言語事情が少しでも伝わったなら嬉しく思います。「面白かった!」「いいと思う」「死ぬほど参考になった!」と思った方はぜひ、SNS等でシェアしていただけると嬉しいです。

 

 

 

 

コメント