こんにちは。ズッキーです。
SNSで、フィンランド人に蒙古斑が出ると聞きました。詳しく聞いてみると、どうやら昔の本にそう書かれているものがあったそうです。
蒙古斑というのは、蒙古という名前の通り、モンゴロイド系の人々の赤ちゃんに出ると言われる痣のことです。
フィンランド人が属するコーカソイドでは、蒙古斑は10%以下の割合で発現すると言われていて、フィンランド人によく出るとすれば、フィンランド人がアジア系の民族だとする俗説に説得力が出ます。
面白そうなので、論文などで調べてみることにしました。
蒙古斑ってなに?
蒙古斑とは、幼児の腰やお尻に先天的に発生する痣のことです。明治時代の日本のお雇い外国人であった、ドイツ人医師のエルヴィン・フォン・ベルツによって命名されました(独:Mongolenfleck)。
蒙古斑ができるのは、メラニン色素が原因です。本来、メラニン色素は黒っぽい色ですが、皮膚の深い層(真皮)に蓄積すると、その上にある層で光が散乱し(チンダル効果)、皮膚の表面では青く見えます。
ただ、その発生学的メカニズムは、まだ正確に分かっていません。
初めて見た時は、私はかなりギョッとしました。親戚の子供のオムツを替えているのを見ていたら、そこに大きな痣が!! 「このアザ、どうしたの!?」と聞いて、それが蒙古斑であることを知りました。なので、初めて見た時のエルヴィンさんの衝撃はいかほどのものだったのかは、ちょっと気になります。
名付けられた当初は、日本人含むモンゴロイド系の人々に出るとされていましたが、実際には、ネグロイド(黒人)系、ヒスパニック系でも発生し、白人でも稀に現れることがわかっています。
では、フィンランド人では、どれほどの割合で蒙古斑が現れるのでしょうか?
フィンランド人の蒙古斑の発現率
結論から言うと、フィンランド人で蒙古斑が出る確率はわずか0.04%です(2人 / 4346人)1。
「あれ、めっちゃ少なくない!?」と調べた私自身もびっくり。
一方、コーカソイドの蒙古斑出現率は、〜10%程度とされています。
このことから言えるのは、フィンランド人は、コーカソイド系の中でも、蒙古斑の出現率が低いということです。
他の民族と比較してみると?
そもそも、蒙古斑はモンゴロイドにのみ現れるものではありません。論文や医学系のサイトから、その発生確率を表にまとめてみました。
| 蒙古斑の発生確率 | |
| 日本人 | 90%以上 |
| 台湾人 | 61.6 〜 90% |
| 中国人 | 86.3% |
| アイヌ | 46.3% |
| トルコ人 | 13.2 〜 26% |
| アフリカ人 | 75 〜 90% |
| ヒスパニック系 | 70% |
| インド人 | 61.8 〜 84.7% |
| ヨーロッパ人 | 1 〜 10% |
| 白人系アメリカ人 | 6.7 〜 9.3% |
| 白人系オーストラリア人 | 13.3% |
| フィンランド人 | 0.04% |
ついでにフィンランド人の親戚であるサーミ人のデータも一緒に探してみましたが、見つかりませんでした。
なぜフィンランド人に蒙古斑が出ると言われたか?
そもそも、フィンランド人がアジア系だという学説は、19世紀にヨーロッパで流行って、戦前に日本に持ち込まれました。
その根拠は、フィンランド語や日本語がウラル・アルタイ語族という大きな語学体系上の同じグループにあるとされたことです。この学説はすでに否定されているのですが、なぜかそこから分岐した「フィンランド人はアジア系」という考えだけが生き残っています。
特に、古い書籍ではその論調が残っていて、蒙古斑もその流れで組み込まれたのだと思います。蒙古斑がフィンランド人でも見つかったのは、本当だったのだと思いますが、ちょっと誇張されたのではないかと思います。古い本の記述を根拠にして、次の本が書かれ、それが連綿と受け継がれて伝言ゲームで誇張された可能性もあるでしょう。
フィンランド人がアジア系なのかについては、別記事「フィンランド人・サーミ人はアジア系?遺伝学からわかった複雑なルーツ」で詳しく解説しています!
まとめ
この記事で分かったことをまとめてみました。
- フィンランド人に蒙古斑が出るのはかなり珍しい。
- 蒙古斑の観点から、フィンランド人が、遺伝的にアジア人に近いとは言えない。
SNSで聞いた話から調べてみると、とても勉強になりました。世の中知らないことだらけなので、色々調べたことを共有できたら嬉しいです。
引用文献
- Karvonen, S. L., Vaajalahti, P., Marenk, M., Janas, M., & Kuokkanen, K. (1992). Birthmarks in 4346 Finnish newborns. Acta dermato-venereologica, 72(1), 55-57.
- Kettner, M., Birngruber, C. G., Niess, C., Baz-Bartels, M., Bunzel, L., Verhoff, M. A., … & Ramsthaler, F. (2020). Mongolian spots as a finding in forensic examinations of possible child abuse–implications for case work. International journal of legal medicine, 134(3), 1141-1148.
- 菖蒲沢昇. (1959). 本邦人蒙古斑に就て. 日本医科大学雑誌, 26(7), 663-679.
- 日本形成外科学会『太田母斑・異所性蒙古斑(青あざ・真皮メラノーシス)』(https://jsprs.or.jp/general/disease/umaretsuki/hifu/otabohan.html)2025.12.8アクセス
- ex-Tokyo Medical University Genetics Study Group『About Mongolian Spots』Hironao NUMABE, M.D., Ph.D(https://cligen.org/english/mongolianspot.html)2025.12.8アクセス
- Science Direct “Mongolian Spot” (https://www.sciencedirect.com/topics/medicine-and-dentistry/mongolian-spot)2025.12.8アクセス
脚注
- フィンランド人の蒙古斑の割合の妥当性について
Karvonen et al. 1992を参照しました。他にも文献を探してみたのですが、うまく見つかりませんでした。とはいえ、4000人以上もサンプリングしたのなら、データとしては十分だと判断しました。 ↩︎


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